日本の外為法ではJPY1,000,000以上の現金を海外に持ち出す場合税関への申告義務がある。日本国内の銀行からJPY1,000,000以上の海外送金をすると所轄の税務署に報告されることになっている。こうして国家は個人のちょっとまとまった資金の流れを把握している。

2017年からの「CRS(共通報告基準)」の稼働により中国でもこうした個人資金の流れに対する監視が相次いで強化されている。2016年12月1日にそれまでは1銀行に複数の口座を保有することが可能だった個人名義口座が1銀行当たり1口座のみということにされている。

確かに昔の中国の銀行は簡単に口座が開設できる一方で残高がなくなってしばらくすると自然消滅するというイメージだった。自分自身も過去に中国銀行とか中国工商銀行、中国建設銀行の口座を複数持っていた。元々持っていた口座の他に給与振込用の口座を作ったり、従来預金通帳のみだったところにATMカードがデビューしたものの通帳とATMカードを並行して持つことができない仕組みになっていたのでもうひとつ作ったり。

ATMカードを紛失して再発行すると1週間後に窓口に出向いて新しいATMカードを引き取りに来なければならないためいっそのこと新しい口座を開設して資金を新口座に移してしまう方が効率的だったり。そういう具合に少額入った複数の貯金箱が自分の部屋のどこにあるかわからなくなった子供のような状態になったものだ。

2017年7月1日より新たにできた規定もある。中国非居住者の銀行口座について氏名、現住所、居住国(築)の納税者番号、出生地、生年月日、口座番号、口座残高の情報が収集及び管理されることになった。同時に新規口座の開設について、開設希望者は居住声明書(居住者・非居住者等の声明文書)の提出が義務付けられることになったという。

昨年より中国シンセンにある銀行では中国に長期滞在していない非居住者の口座開設は不可となっている。居住声明書とやらを提出すれば再び旅行者でも口座開設ができるようになるのかもしれない。

既存口座については原則として新たな手続きは不要だが銀行は口座残高等に応じて(個人の場合は金額を問わず、法人の場合はUSD250,000を超える場合において)既存データを基に居住性審査を行う。また残高がUSD1,000,000以上の個人口座については銀行担当者による確認作業が実施される。この辺りの詳細はまだ明らかになっていないので引き続き状況を注視したい。

窓口における累計RMB300,000/日以上の送金、あるいは窓口以外(ATM、ネット等)からの累計RMB50,000以上の送金は高額取引として審査の対象になる。RMB50,000以上(以前はRMB200,000以上)の入金、出金、両替の現金取引、RMB500,000(外貨USD10,000相当)以上の国内送金、RMB200,000(外貨USD10,000相当)以上の海外送金がすべて金融機関から政府に報告されることになった。

冒頭に述べたような日本にもある資金の動きの当局への報告規定である。以前から存在したが今回現金取引の部分が従来のRMB200,000以上からRMB50,000以上に引き下げられた。これによる中国全土の銀行の作業負担増は夥しいはずだ。

2017年9月1日より中国国内で発行されたクレジットカード及びデビットカードを使用して中国国外で1,000元以上の出金または消費をした場合は中国の外貨管理局に報告がなされるようになるらしい。1,000元はわずかJPY16,500(※)程度である。※2017年7月時点 それをいちいち報告していては文字通りキリがないと思うのだが。。ちなみにこれは報告基準なので今のところは引き出しそのものの制限ではないようだ。

現時点での中国の銀行のATMカード(銀聯:UnionPay)の海外引き出しの限度額はRMB10,000/日(約JPY165,000)、RMB100,000/年(約JPY1,650,000)である。UnionPayのATMカードはデビットカードとして買い物に利用することができ、中国人旅行者が「爆買い」に使うカードとして有名だが、このデビットカード利用の利用限度額はRMB1,000,000/年である。

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