「起業はリスクが高い」という幻想


「将来、起業したい」と考える人は非常に多い。今、実際に起業していない人でも胸に手を当てて思い返してみてほしい。これまでの人生で一度も「起業したい」と考えたことはなかっただろうか?だが、実際に起業して個人事業主なったり、会社を経営したりする人は多くない。ほとんどの人が起業したいにもかかわらずそれを実行しない大きな理由に、「リスクが高いから。。」というのがある。

現在安定した職場で働いていれば、その職を辞して独立起業するのはリスクがある、と言えるかもしれない。しかしいったいそれにどのくらいのリスクがあるのかということを計算して、論理的に判断している人は決して多くないように思える。例えば30代半ばで貯蓄1,500万円の独身男性の会社員が会社を辞めてラーメン屋を開業すると話す。すると普通、その人の周りの友人や同僚たちからは、「リスク高いよ。辞めておいた方が良いんじゃないの。。」とネガティブな意見が出たりする。それを訊いて、”そうだよな。リスク高いよな。。失敗したら取り返しがつかないもんな。。”と、失敗することに致命的なイメージを描いてしぼんでしまう。ありがちな風景だ。

だが果たして本当にそうだろうか?ラーメン屋を開業するには場所によってかかるコストは大きく違うが例えば都市圏で駅や学校、会社が近くにあるようなよくある立地でも居抜き設備付きで月の家賃20万円というのは典型的な物件だ。礼金敷金各2ヶ月、それに足りない棚や調理用具、食器を20万円程度で新調すると前家賃を含めてざっくり120万円で店の準備ができる。職人を1人雇って給料が30万円/月、自分がホールや会計を担当する。15席の4回転で1日60人、客単価が700円で1日の売り上げが42,000円、原価率約30%で1日の利益は30,000円程度だ。1ヶ月の粗利90万円から人件費と家賃を引いた40万円が自分の手残り、という事業計画。これで1年間経営をして、仮に客が1人も来なかったとしても損失は約700万円である。だがこれを全部自己資金1,500万円から出したとしても差し引き800万円は残る。1年間の生活費を引いても500万円ぐらいはまだ持っていることだろう。しかし真面目に商売に取り組んでいれば売り上げがゼロなんてことはありえない。仮にそれほど上手くゆかなかったとしても300万円とか400万円の損失で済むはずだ。そうすれば手元にはやはり800万円から900万円が残る。

どうだろう?「起業がリスクが高いから。。」という一般的な言葉から想像する致命的なイメージとは少し違うな、、と思ったのではないだろうか?この時点でもう一度会社勤めに戻ることもできるだろうし、手元の資金を基に失敗を糧(かて)にしてより精度の高い方法でもうひと勝負打つことだって可能だろう。そもそもきちんとした事業計画を基に経営すれば多くの場合は損をしないどころか、再投資の資金を得て利益を拡大する、すなわち「成功する」可能性だって小さくないのである。詳細な計算なしで巷で言われる起業はリスクが高い、失敗したら取り返しがつかない、というのは幻想であることをはっきり認識しておこう。

逆に給与所得者であり続けることのリスクの大きさも理解しておくことが大切だ。先の起業するケースとは反対に、巷では会社員であることが「安定している」というイメージを抱かれやすい。しかし終身雇用が徐々に崩れていっているこのご時世では企業の業績悪化や自身のパフォーマンスの低下によってリストラされることも少なくない。さらに従業員のスキルは往々にしてその社内では大きな力を発揮するが、外の世界では平凡なものであることも多い。自分が社員として作ってきた実績も顧客も会社のものであり、自分の財産として蓄積することもできない。特に年齢が高くなって急に企業から放り出されると再起することは極めて困難になる。そうした給与所得者が抱えているリスクまで勘案すると自分が若くて元気なうちに起業をすることのリスクはさらに小さいものになるのではないだろうか。


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