日本国内における有効な資産形成策、不動産事業に付随した節税を考える


「脱税」とは。納税すべき所得があるにもかかわらず、架空の経費を捏造して利益額を少なく見せたり、あるいはその所得自体を隠したりして課税を逃れることである。「租税回避」とは。税法で未規定の手法を駆使し、法に抵触すること無く課税を逃れる行為である。

「節税」とは。税法で許されている範囲内でできるだけ効率よく経費を計上して課税所得を圧縮したり、税額控除など駆使して支払う税金の額を減らすことである。脱税は違法行為であるからそれが露見すれば法的に処罰を受ける。申告の漏れた税金を改めて支払わなければならないのはもちろんのこと遅れた期間の延滞税、悪質なものであれば罰金を含んだ加算税、あるいは刑事罰を課されることもある。租税回避は現時点では違法行為ではないがそれが国家の利益を損なうものであればのちのち新たな法規定ができてその手法が使えなくなる可能性がある。節税は法的にはまったく問題がない。というより、これはすべての人ができる限り余すこと無く利用しなければならない。しかし税法は非常に複雑であり、国家は国民がそれを利用しなければ税収が増えるだけなのであえてわざわざわかりやすく教えてくれることはない。節税をおこなうにもそれなりの努力をして知識をつける必要がある。

日本国内において取り組める投資の中でもっとも多くの節税機会を提供してくれるのはやはり不動産投資ではないだろうか。不動産を購入して賃貸に出すという事業は主に所得税と相続税という日本人にとって関心の大きい2種類の税金を節税機会を提供してくれる。個人で始めた不動産経営の規模が拡大し、それを法人化するという過程においてそれぞれのフェーズでの有効な節税方法はぜひ把握しておきたい。個人所得税の節税はサラリーマンや事業主など別に収入のある多くの人が使える初歩的な手法と言える。例えばサラリーマンの給与収入は勤務先の会社が源泉徴収をして代わりに税務署に納税している。多くの人は自分で納税手続をしていないので所得税を支払っているという感覚すら薄い。年末調整で支払い過ぎた所得税が返ってくるときに少し実感できるぐらいではなかろうか。しかし実際に納めている所得税は決して安いものではなくて年収600万円のサラリーマンだったらざっくり100万円ぐらいの所得税・住民税がを支払っている。不動産投資をしてそれを賃貸に出すという事業をおこなうことによってその100万円を取り戻すことができるというのがこのフェーズでの節税だ。具体的には賃貸経営において赤字を計上するのである。購入した不動産をテナントに貸し出して家賃収入を得る、という賃貸経営をおこなうと管理費・取得費、借入金利子、保険料、減価償却費、雑費などさまざまな経費が計上できる。その経費の合計が賃貸収入を上回れば赤字となる。その赤字の部分は会社の給与収入から差し引くことができる。つまり課税所得を少なくして所得税も少なく支払うのである。「赤字」という言葉が引っかかるかもしれないが不動産経営において赤字は必ずしも実質的な損失を意味しない。

例えば上記に出てくる減価償却費は経費としては計上できるが実際に手元からお金が出てゆくことのない帳簿上の経費なのである。払ってないけど払ったことにしてマイナスを計上できる。もう少し噛み砕くと減価償却費は購入した不動産の金額を購入時に一括して費用計上をするのではなく将来の利用可能な年数で按分して計上することである。減価償却費が利用可能な年数は建物の強度によって法律で決められており、鉄筋コンクリート(RC)47年、重量鉄骨34年、木造22年である。仮にRC構造の建物を1億円で購入した場合、1億円x償却率0.022=220万円の減価償却費が計上できる。通常これだけの価格の物件はローンを利用して購入するはずだ。ローンを利用すれば自分の手元の資金を使わずに購入できるし、そして数年後、10数年後に売却するとすればその代金でローン残額を返済すれば良い。購入時と売却時でその物件の価格がほとんど変わっていないか上昇していれば自分の資産をまったく減らさずに賃貸経営をおこなうことも可能だ。ところがその場合でも保有期間に計上した減価償却費は「使ったもの」として利益から差っ引くことができる不思議な経費となる。

減価償却費は不動産経営をする人に対して国が与えてくれる補助金のようなものと考えても良いかもしれない。こうして仮に帳簿上年間200万円の赤字を計上できるとすれば本来600万円-200万円=400万円の所得税しか支払わなくて良くなる。源泉徴収で払いすぎていた200万円分の所得税があとで還付される。これが個人経営フェーズにおける所得税節税のメカニズムである。個人で不動産経営を進めて賃貸収入が増えてゆくといずれ個人の所得税の税率が法人税率を追い抜くタイミングが訪れる。日本の所得税は所得額が増えるにつれて税率が上がる累進課税を採用しているからだ。国税としての個人所得税率は課税所得額によって5%(195万円以下)から45%(4,000万円以上)と定められている。

2018年時点での日本の法人税の実効税率は30%を少し下回るぐらいなので個人経営の不動産賃貸収入が増えてゆくといずれ個人の所得税率が法人税率を上回る。そこが「法人化」の分岐点にもなる。会社を設立して不動産事業を法人に移管すればその収益は法人税率が適用されて賃貸収入が増えれば増えるほどに節税効果が高まるのである。これが法人化フェーズにおける所得税の節税方法だ。相続税の節税は不動産を買えば相続資産の評価額計算で課税所得額を引き下げることができるという部分に着目した方法である。

相続税の評価額計算において現金を相続する場合は金額の100%が相続税の課税所得評価額となる。これはシンプルだ。ところが保有する資産が現金以外の場合、それぞれ現金での価値(評価額)を計算しなければならない。さまざまな資産に独特の計算方法があるが、ある種の資産にはその計算が非常に有利に設定されている。不動産の課税所得は以下の計算式で評価額を計算することになっている。

建物部分:固定資産税評価額X(1-借家権割合)

土地持分:路線価X(1-借家権割合X借地権割合)

これによりざっくり土地部分は実質市場価値の80%程度、建物部分では50%程度が相続税の課税所得額と評価される。さらに賃貸事業を営む目的の投資用不動産ということであれば土地部分はさらにその60%、建物部分は70%程度に評価額が下がる。この結果として賃貸用マンションを相続する際の相続税課税所得評価額は現金で相続する場合の30%程度になるのである。2015年度の税制改正により3,000万円+600万円X法定相続人以上の資産を持っている人は相続税の対象となっている。これを現金で持っていると相続人はのちのち大変な思いをすることになる。税法を勉強し適宜有効な対策を採っておきたいものである。


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