2018年1月26日、日本の暗号通貨取引所コインチェックから580億円分の暗号通貨のNEMが流出した。ハッキングによる不正送金の可能性が高い。2014年のマウントゴックス事件から暗号通貨取引所における顧客の預かり資産流出事件は複数発生している。(経営者による着服の可能性を含め。。)流出した顧客の資産は補填されたこともあるし、戻ってこなかったケースもある。

ライトコイン(Litecoin)とは?

ペンタゴン(米国防総省)にも侵入してサイバー攻撃を仕掛けられるようなハッキングの技術を持ってすれば取引所の預かり資産などは狙えばいつでも手に入るものなのかもしれない。これが暗号通貨の否定につながるものでは決してないが利用者としてこの盗難リスクは再認識しておきたい。

「ライトコイン(Litecoin)」は2011年10月、元GoogleエンジニアだったCharlie Lee氏によって開発された暗号通貨。通貨単位はLTC。暗号通貨の草分けであるビットコインが発表されたのが2009年1月なので歴史の浅い暗号通貨の世界では老舗の部類に入る。もともとビットコインの思想や技術を下敷きにして、その欠点を補う形で開発されたものなのでマイニングによりブロックが生成される仕組みや発行枚数に上限がある等、ビットコインと性質を同じくする部分は多い。ブロックサイズが1MBであること、マイニングの難易度の調整が2016ブロック毎におこなわれること、コンセンサスアルゴリズムにプルーフオブワークを用いていることなどがライトコインとビットコインの共通点である。

ライトコインとビットコインの違い

ライトコインとビットコインの大きな違いはまずブロックの生成スピード。ビットコインのブロック生成の間隔は10分なのに対し、ライトコインは2.5分である。ブロック生成時間の短縮はより多くの処理を可能にし、送金手数料を安くできることにもつながっている。コインの発行枚数の上限はビットコインが2,100万枚なのに対し、ライトコインはは8,400万枚である。

ライトコインのブロック生成スピードは4分の1、総発行枚数は4倍ということである。送金の処理速度が速く、コストが低いというのは間違いなくライトコインのメリットだと言える。承認にある程度の時間とコストがかかるブロックチェーンの仕組みを経由せずに暗号通貨の決済ができる技術であるライトニングネットワーク(※1)による送金にいち早く成功したのもライトコインである。

※1:例えばカフェでコーヒーの支払いに暗号通貨を使いたい場合にいちいち10分もかかるブロック生成を待っているのは辛いし、マイナーへの報酬が高騰すれば少額の支払いでは手数料の方が高くなってしまう可能性がある。その不都合を解決するためにブロックチェーンを回避して決済をおこなう技術。一方、ブロック生成の処理速度が速いということは取引承認のハードルが低いということであり、承認により時間のかかるビットコインに比べてデータ改ざんのハードルも低いと言える。すなわち安全性という面ではビットコインの後塵を拝していると言えなくもない。

2018年1月現在、暗号通貨の時価総額ランキングでライトコインはビットコイン、イーサリアム、リップル、ビットコインキャッシュ、カルダノ、ステラに続いて第7位である。ビットコインの本来の処理速度よりも速く安くすることを目指して開発されたのがライトコインである。

ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)とは?

が、その後ビットコインは利用者が急増するとともにさらに送金の処理速度が遅くなり、手続にかかるコストが増えてゆくことになる。その原因は取引の情報を書き込むブロックの容量が1MBに制限されていることである。1MBのブロックに各取引の記録を書き込んでゆくのだが利用者が増えて取引履歴が増えるとともに情報が1MBに収まりきれず、残った部分は別途処理をしなければならなくなる。これが作業時間と手間の増加につながり、手続遅れとコスト増加を引き起こした。ビットコインのスケーラビリティ問題だ。つまり利用者が予想以上に増えすぎたために容量不足で様々な新たな問題が発生するに至った。

その解決策として2017年8月に誕生したのがビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)である。通貨単位はBCH。従来のビットコインとは互換性のないかたちで分岐するハードフォークによって誕生している。ビットコインキャッシュは基本的にビットコインの技術を踏襲しながらブロックサイズを8MBにしてある。

情報を書き込むスペースが大きいから1つのブロック内で充分に完結可能なので処理速度が落ちにくい、処理能力に負荷もかからないので余計なコストも増えにくいということになる。つまりライトコインとビットコインキャッシュはビットコインの技術と深く踏襲している暗号通貨と言える。その中でもビットコインの本来のスペックをより軽快にしたのがライトコイン、利用者の急増により後天的に発生した問題を解決するために開発されたのがビットコインキャッシュと理解すれば良いだろう。

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