人間の知恵の産物。ヘッジファンドの仕組みを分解する


香港を拠点に投資・資産運用を取り扱っていると世界中から日々いろいろな商品の情報が入ってくる。優良と思えるもの、たいしたことないもの、まともなもの、怪しいもの、玉石混交なのだがどれも多かれ少なかれ人間の知恵の産物でありその内容を見るのは面白い。

この仕事の醍醐味でもある。最近興味を惹かれたものに以下の商品がある。

運用手法:為替取引を投資対象としてトレンドフォロー型と金利サヤ取り型を混ぜて運用
申し込み期間:月1回。いつでも申込み可能
最低申込金額:USD50,000相当
追加投資最低金額:USD10,000相当
申し込み可能な通貨:USD、JPY、AUD
満期償還日:なし
元本保証:なし
運用実績(手取りベース):約20%
購入時手数料(購入時、追加購入時):3% (出資額の97%を運用)
解約:月1回のタイミングで解約可能
解約手数料:拘束期間の12カ月内の解約・出金の際には10%の解約手数料が差し引かれる

過去実績:-
2014年利回り実績(年間):26.65%
2015年利回り実績(年間):19.68%
2016年利回り実績(年間):12.54%
2017年利回り実績(年間):16.56%
2018年利回り実績(1~3月の3ヶ月間):2.88%

平均利回り:19.85%

為替取引(FX)を運用対象にしたヘッジファンドである。基本的にはシステムトレードの自動売買を使ったマネージド・フューチャーズ戦略を採用しているが必要に応じてファンドマネージャーが裁量によって手動で介入する形を採る。興味深いのはトレンドフォロー型と金利サヤ取り型の両方を取り入れて運用している部分である。「トレンドフォロー型」とは上昇トレンドが出たときには「買い」を入れ、下落トレンドが出たときは「売り」を入れて利益を狙ういわゆるロング・ショートを駆使した自動売買だ。

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要するに下落トレンドから上昇トレンドに転換する場所で「売り」を手仕舞って「買い」を入れる、または上昇トレンドから下落トレンドに転換する場所で「買い」を手仕舞って「売り」を入れるというシンプルな取引だがこの形のマネージド・フューチャーズはその転換点をいかに正確に割り出すアルゴリズム(問題を解決する手順)をプログラムの中に組み込むかがカギになる。ただどんなに優秀なトレンドフォローのプログラムでも苦手とするのが上昇・下落の傾向がはっきり出ないレンジ相場の状態である。非常に小さな幅で上昇と下落が頻繁に入れ替わる場合はいちいちその転換点を判断するのが難しく、判断したと思ったらまたすぐに逆の転換点が出る。トレンドを狙ったプログラムでレンジに対処するのは至難の業なのである。よってこのヘッジファンドのトレンドフォロー型の部分は上昇と下落のはっきりしたトレンド相場では大きな利益を積み上げてゆくが横ばいのレンジ相場ではパフォーマンスを落とす宿命から逃れにくい。

そこで「金利サヤ取り型」を用いてカバーする仕組みをこのヘッジファンドは備えているのである。為替取引にはスワップポイントという金利が付く。スワップ金利とは簡単に言えば売り買いする通貨ペアの金利の差である。例えば金利の低い日本円を売って金利の高い豪ドルを買うとその金利の差額がポジションに付与されることになる。逆に豪ドルを売って日本円を買えば金利の差額が引かれる。為替取引においては同じ価格で同じロットで同時に売りと買いを建てる(両建て)と原則として損失は発生しないことになる(話を単純化するためFX業者の手数料であるスプレッドは考えない)その場合スワップ金利も両方で発生して相殺されることになる。。が、なぜかFX業者の中にはこのスワップ金利を付けたり取ったりしない業者も存在する。なのでスワップ金利が付く取引はスワップ金利が付く業者でおこない、通常ならスワップ金利を取られる反対側の取引をスワップ金利を取らない業者でおこなうという手法が成り立つのである。為替変動による損失を抑えてスワップ金利だけをもらうというアービトラージ(サヤ取り)が成立するのである。ところが実はこれを完璧におこなうのが容易でない局面もある。それが大きなトレンドが発生して値動きが激しいときである。

このサヤ取りは同じ価格で売りと買いを同時に建てることがポイントとなるが2つの異なる業者で取引することになるので同時に注文を出しても約定価格にズレが出てしまうことがある。そのズレが為替差損を生むことがあるのだ。(差益を生むこともある)スワップ金利は少額なのでこのズレから生まれる差損が大きければ消し飛んでしまう。そしてそのズレは値動きの穏やかなレンジ相場では発生しにくく、トレンド相場では発生しやすいということになるのだ。つまりこのヘッジファンドはトレンド相場ではトレンドフォロー型が力を発揮してどんどん利益を積み上げ、レンジ相場ではスワップ金利が少しずつ確実に利益を積み上げてお互いの欠点を補完しながらトータルでは15~20%の平均利回りを狙ってゆく商品ということになるのだ。


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