「日本国の債務は1000兆円。

国民一人あたり800万円以上の借金」

 

 

報道などでよく耳にするフレーズ。

 

 

しかし、

 

なんかおかしくないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

************************************************************

 

【国境なき投資戦略】

 

第一回 政府の債務は誰のもの?

 

************************************************************

 

 

 

 

 

 

 

一人の男がいる。

 

彼はごく平凡な

サラリーマンで年収は400万円。

 

しかし彼には浪費癖があり、

会社の後輩に気前よく奢ったり、

車も毎年買い替えたりする。

 

だから年間の支出は900万円ほどかかる。

 

 

その話を聞いた僕は驚いて彼に訊いた。

 

僕:「給料が400万円しかないのに、900万円も使うなんて。

   足りない500万円はどうするんだい?」

   

彼は屈託なく笑って言う。

 

彼:「んなもん、借金だよ。借金に決まってるじゃん」

 

僕:「借金って、自分の収入よりも多い金額を人から借りるのかい?」

 

彼:「そうよ。ここ20年ぐらい借金しまくりで、もう1億円ぐらいあるんだぜ~」

 

僕:「い、1億円!?そんなに借りて返せるのかよ?」

 

彼:「大丈夫さ。何を隠そう、借金の相手は女房だもの。

   別に銀行やサラ金から借りてるわけじゃないからね」

 

僕:「しかし、そんな大金・・」

 

彼:「心配ないって。実はウチの女房、資産家の娘なんだ。

   自分の貯金だけで14千万円ぐらい持ってんだよ。ハハハ。

   そんなことより、飲みに行こう。奢るぜ!」

 

 

この話を聞いてどう感じるだろうか。

 

 

もっと身の丈に合った生活をするべきだ!

 

と思っただろうか?

 

経済観念の欠落したとんでもない奴だ!

 

と怒りに似たものを感じた人もいるだろうか?

 

あるいは、

 

そんな亭主に金を貸し続けるなんて、

なんてバカな女だ!

 

という感想を持つ向きもあるかもしれない。

 

 

 

 

しかしこの話をそっくり100万倍すると、

 

50兆円しか収入がないのに、

 

90兆円の国家予算を組んで、

 

40兆円の国債を発行している。

 

 

 

・・どっかで聞いたことのある話。

 

 

 

そう。

 

 

 

わが日本国政府の

台所事情と同じ話になる。

 

 

 

そして積もり積もった

借金の合計は1000兆円に達し、

そのほぼ全てを1400兆円に

及ぶ日本国民の個人資産から

借りていて、

 

 

 

「海外からの借金はほとんどないから大丈夫」

 

 

などとうそぶいているところまで同じ。

 

 

 

日本国政府の債務残高1000兆円。

これに対し日本国のGDP500兆円。

 

 

GDPというのは、

一年間に日本国内のすべての

労働者が働いて生み出した価値の合計だから、

 

 

つまり、日本国政府は

日本の労働者全員が

2年間弱タダ働きをして、

はじめて返済できるという

巨額の借金をしていることになる。

 

 

 

 

しかし誰がそんな大金を

貸しているのだろうか?

 

 

 

 

政府にお金を貸すという行為。

 

 

 

それは国が発行する借金証書である

 

「国債」

 

を買うことによってなされる。

 

 

 

国債を大量に買っているのは、

民間の銀行をはじめとする機関投資家だ。

 

 

個人投資家も

個人向け国債なるものを買っていたり、

日本国債を保有している外国人投資家もいる。

 

 

だがその割合はごくわずか。

 

 

 

発行された国債の実に90%以上は、

日本の機関投資家が保有している、

 

 

「機関投資家」

 

 

すなわち銀行、ゆうちょ、保険会社など。

 

 

 

だが、

 

 

 

彼らが運用目的で国債を

買っている資金の原資は

何を隠そう我々の預金や保険料だ。

 

 

すなわち、

 

 

個人向け国債など

持っていなくとも、

我々は銀行預金を通して

日本国債に投資している

ということになる。

 

 

我々国民が政府に

お金を貸している

ということになるのだ。

 

 

日本国政府は

借金を繰り返している

浪費家の男のようなもの。

 

 

となると我々が置かれた立場は、

 

 

放蕩亭主におとなしく

お金を貸し続けている妻と

なんら変わらないのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**********************************************************

 

執筆者:玉利将彦

 

上海と香港を拠点に活動し、中国在住歴は18年に渡る。

 

香港の証券取扱免許(SFC)と保険取扱免許(PIBA)

保有する資産運用アドバイザーとして、

顧客のライフプランに即した投資計画の立案及び

積立ファンド・保険の仲介、HSBC香港・BOOM証券・中国銀行など

海外の有名金融機関の口座開設・運営サポートをおこなっている

 

**********************************************************

 

 

 

 

 

 

 

 

【編集後記】

 

 

冒頭にも書いたように、

 

新聞・ニュースなどで

日本の債務を語るとき

 

 

「日本国の債務は1000兆円。

国民一人あたり800万円以上の借金」

 

 

という論法がよく使われます。

 

 

しかし、ちょっと待って欲しい。

 

 

たしか我々はお金を貸している

立場だったのではないでしょうか?

 

 

それなのにどうして

800万円以上ものお金を、

借りていることになるのでしょうか?

 

 

 

「日本国の債務は1000兆円。

国民一人あたり800万円以上の借金」

 

 

繰り返し聴いているうちに

なんとなく耳慣れてきているのも否めません。

 

日本国は主権者である

日本国民のものだから、

日本国政府の借金も国民のものだ。

 

そう言われればそんな気もする・・

 

 

いや!

 

それでもおかしい。

 

 

国民は法律で決まった

税金を払っているのだから

政府はその税収の範囲で

やり繰りをする責任があります。

 

政府のおこなった仕事の

すべてが必要だったのか?

 

無駄遣いはなかったのか?

 

 

はなはだ疑問です。

 

 

やはり我々に借金などない。

 

 

私はそう考えます。

 

 

「日本国の債務は1000兆円。

国民一人あたり800万円以上の借金」

 

 

こんな報道を聴けば、

 

「冗談じゃない!」

 

と、毎度毎度、

腹を立てる必要があります。

 

 

そうしなければ本当に自分たちが

借金をしているような気になってしまい、

いつしかそれを返すのは当たり前と

信じこんでしまうような気がします。