「値ごろ感(Affordability)」の良さは不動産投資には欠かせない要素だ。この値ごろ感を図る指数に「アフォーダビリティ比率(Affordability Ratio)」というのがある。アフォーダビリティ比率は年間世帯所得に対する住宅価格の倍率のことで、この比率が低いほど住宅が買いやすいことを示すが、東京・横浜におけるAffordability Ratioは2014年の第3四半期で4.9である。要するに年収5年分の金額で家が買える、ということである。ニューヨークやニュージャージーのアフォーダビリティ比率は6.1、ロンドンで8.5、シドニーで9.8、香港に至っては17にもなる。

ウィーン(Vienna):オーストリア

Affordability Ratio:13.68

・過去10年間でウィーンの人口の増加率は1%だが現在は増加が加速しており2060年までに27%増えると見込まれている
・旧式物件の価格は2010年以降35%上昇している
・新建築物件の賃貸価格は過去6年で21%上昇している

ウィーンは本来ウィーン大学やウィーン工科大学など20の大学がひしめき、多くの留学生を含む130,000人の学生が学ぶ学術都市である一方で2015年のイノベーション都市インデックス(Innovation Cities Index)では世界3位にランクされてることもあり人々を惹きつけている。2016年の経済成長率は1.6%。人口の大規模な流入は始まっており、それに対応するための住宅需要が不動産価格を押し上げはじめている。オーストリアの大手不動産管理会社のCEOであるAndreas Hollerによれば人口増加により今年だけでさらに11,000ユニットの住宅建設が必要とされているとのことだ。

ハンブルグ(Hanburg):ドイツ

Affordability Ratio:データなし

・ハンブルグの人口は2025年までに現在より360万人増加する見込み
・現時点でEU圏最大の投資であるUSD150億をかけたハンブルグ・ハーフェンシティ(HafenCity)の再開発が進行中
・ハンブルグの不動産価格は2016年に10%上昇した

ドイツではトップの一人あたりGDPを誇るハンブルグ。市民が享受するその生活の高いクオリティは常に賞賛の的である。またハンブルグは住民の3分の1が30歳以下という若者の街でもある。通常の水準に戻るまでにあと数年はかかるだろうという低金利の影響で住宅価格は2009年から70%という大幅な上昇を記録している。ドイツの著名な不動産会社であるCBRE VONOVIAによると、ハンブルグの空室率はわずか0.7%であり、HSHノルトバンク(HSH Nordebank)によると賃貸価格は2018年までに9.6%上昇すると見込まれている。

フランクフルト(Frankfurt):ドイツ

Affordability Ratio:7.8

・世界的な金融の重要拠点であり、ドイツ金融の中心である
・フランクフルトの人口は2020年まで40,000増え、2040年までに総人口は83万人になると予測されている
・住宅価格は2009年から2016年までに約40%上昇した

EUの中央銀行である欧州中央銀行が本店を置くフランクフルトは世界的な金融センターであり、ハイクオリティな生活空間でもある。緑あふれる都市(Green City)としても有名であり、優れた交通機関を備えている。ドイツの他の都市と比較して、フランクフルトは6.8%という低い失業率を誇る。フランクフルトの人口は過去5年間で5%という安定的な伸びを見せる一方で就労人口は2009年から12%の増加を記録しており、2016年時点でおよそ36,000ユニットの住宅が不足している状況だ。同年、物件価格は10%、賃貸価格は平均3.5%の上昇を記録した。

デュッセルドルフ(Dusseldorf):ドイツ

Affordability Ratio:10.33

・デュッセルドルフへの海外からの直接投資の金額はドイツの都市の中でトップを誇る
・人口増加率は2025年まで年平均3.5%の予測
・2009年から2016年までに不動産価格は65%の上昇を記録した

海外からの直接投資が盛んなデュッセルドルフは国際的なビジネスと金融が盛んな土地である。雇用は2009年〜2016年に10.5%伸び、GDPの成長率は2016年〜2017年で2.73%と力強い。不動産価格は2009年〜2016年に65%、賃貸価格は同時期に33%上昇している。この低金利の状態が続く限りキャピタルの増加も継続すると見込まれている。2015年には建築許可と竣工が50%下がる中、空室率は2〜3%を推移しており賃貸需要は強い。2015年までに3.5%/年の人口増加が見込まれことを考え合わせれば需要の増加は将来に渡って継続するはずだ。

リスボン(Lisbon):ポルトガル

Affordability Ratio:2.9

・新興の若年企業家とベンチャーの拠点
・物件価格は2016年に4.4%上昇
・住宅建設は2013年から2016年に51%増を記録、だが物件の供給はまだ2007年のわずか9%程度にとどまっている

ポルトガルの首都にして最大都市であり、その低コストながらクオリティの高い生活空間、そしてベンチャー起業のスタートアップの拠点であり、「次のベルリン(Next Berlin)」として注目を集めている。GDPの45%を生み出すリスボンはもちろんポルトガルでもっとも富裕な街であり、一人あたりのGDPEUR22,500は国内平均よりも15%高い。ポルトガル政府が主導するポルトガルベンチャーズ(Portugal Ventures)は革新的なベンチャー育成を促進するためにEUR450万の資金を準備しており、2016年にはポルトガル首相のアントニオ・コスタ(António Costa)が更にEUR200万のベンチャーファンド創設を発表した。非居住者への税制的優遇やGolden Visa Programmeも魅力的な要素である。不動産価格は2016年の1年間で4.4%上昇しているが、今だ2013年の最低水準よりもわずか11.9%高い位置にあるだけだ。また特に新築物件の価格上昇は著しく、2013年から2016年の間に30%も高くなっている。その住宅需要の力強さは住宅建設が2013年から2016年に51%増加した一方で物件の供給はまだ2007年のわずか9%程度にとどまっていることからも窺える。

ストックホルム(Stockholm):スウェーデン

Affordability Ratio:9.0

・スウェーデンは結果が身を結ぶという意味においてはシリコンバレーに次いで世界で2番目の科学技術の中心地
・ストックホルムの人口は2020年までに11%増加し、100万人の大台に乗る見込み
・ストックホルムの住宅価格は2014年から2016年の間に15%上昇している

世界でもっとも創造的であり、競争力があり、国際化された都市の1つであるスウェーデンの首都であるストックホルムは一人当たりのユニコーン企業(USD10億以上の企業価値を持つ非上場企業)数がシリコンバレーに次いで多く、別名「ユニコーン工場」(Unicorn Factory)とも称される。ストックホルムはスウェーデンのGDPの33%を叩き出す。ストックホルムの人口は2020年までに11%増えて100万人を突破すると予測されている。この需要に対応するため政府は年間50,000ユニットの住宅供給が必要と試算し、2025年までにEUR950億のインフラ投資をおこなう予定だ。およそ50万人がレントコントロール(※)のフラットの入居待ち状態である。住宅価格は過去5年間に渡って安定的に上昇し、
2014年から2016年の間に15%上がっている。

※レントコントロール(Rent Control):家賃統制。家賃の上昇を抑えるために政府が賃貸料を管理している不動産物件

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