日本の若年層の間にバブル時代を羨望する風潮があると聞いて久しい。私個人にとっても1980年代後半のバブル時代は人生で最初にリアルに感じた好景気だった。当時は学生だったので自分で株や不動産に投資をして儲けたというわけではないが生活費を稼ぐためのアルバイトがふんだんにあり、好きに選ぶことができた。

「バックレる」という言葉が流行った。もともとは「しらばっくれる」というのが語源だが、特に仕事をすっぽかすという意味で使われる。元々日雇いのアルバイトへ行く約束をしていて、そこにもっと手当の良いバイトの話があるとする。当然後者の方へ行きたくなるがわざわざ電話をして断りを入れても人手不足でテンパっている相手からは怒られるだけなので、バックレてしまうのである。経営者の立場になった今考えると大変申し訳ない思いでいっぱいだが、当時の好景気を反映したひと幕である。

就職状況も良く、人手不足に悩む企業が学生を囲い込むために接待や旅行に連れてゆくというエピソードもあった。今、日経平均株価は26年ぶりの高水準で24,000円を超えているが、1989年の大納会に記録した38,915.87円のようやく6割に達したところなのでやはり当時は凄まじかったといえる。

だが1990年にバブルが弾けて好景気が終わり、その後日本は失われた20年に突入する。その時代に社会に出た学生は就職氷河期で大学卒業後の仕事探しに非常に苦労したのでその世代がバブル世代の人々に羨望や嫉妬、ときには憎しみさえ覚えるのは無理のないことだとも思う。しかしその間、新たな成長分野の出現とか急激な資産増大の機会とかバブルがなかったかというと決してそうではない。

1990年代末から2000年代初めにはITバブルの時代が訪れ、ITベンチャーが数多く上場する米国のNASDAQの指数は2年ほどで1,500から5,000超えまで達した。システムとかPCとかインターネット関連の企業であれば事業内容や業績を問わずが買われ、その業界の株価はうなぎ登りだった。そこからソフトバンクやYahoo!Japan、楽天、サイバーエージェントなど大企業に育つ会社も出た。ITバブルは2年ほどで弾けたが、それまでに上手に売り抜けた人や自分で起業したIT系の会社を売却して大きなキャッシュを手に入れた人はいる。

2000年代以降は中国の金融資産、不動産資産が大きく増大した。2000年の初めに1,500台だった上海指数は急上昇を続けて2007年のピーク時には6,000台まで達した。その後、逆に暴落してリーマンショックの時には1,700まで下がったが7年間の上昇過程は大きなチャンスであった。不動産に関しては特に北京や上海、広州などの大都市圏において2000年代初頭から今までに10数倍の値上がりを記録している。バブルの状態にあると言われ続けて10年以上が経ち、地方の乱開発によるゴーストマンションなどの映像を目にすることもあるが需要の高い都市部の不動産はまだ高止まりしたままである。中国人の名義が必要な不動産は別にして、最近は日本人でも中国の株式を取引するのは可能だし、2000年代前半に中国株の投資信託を買っておくだけでも大きな収益機会はあった。

2010年代に入ってからもオーストラリアのシドニーや英国ロンドン、そして東京の不動産価格は大きく上昇している。中国やアジアとは違い法整備のしっかりした先進国であれば不動産に投資しても安心度は高い。

そして昨年の暗号通貨。2016年初に15万円程度だった1ビットコインは一時200万円を超え、ビットコイン以外の通貨(アルトコイン)の中には数百倍になったものもある。弾けてはじめてと「バブルだった」いうことになるので2010年以降に上昇中のものはまだバブルとは言えないが、日本のバブル景気以降もこれだけの資産増大の機会があったのである。

常に今には今のチャンスがある。昔を懐かしんだり、羨んでいる暇があるならそれに乗るべく行動すべき。「貯める」ではなく「投じる」のマインドセットはやはり日本人にとって重要だ。

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