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ロシアが隣国ウクライナに侵攻してから2週間が経った。

国連の常任理事国であると同時に核保有国でもある国が起こした侵略戦争はすでに様々な問題をあぶり出している。ウクライナのEUやNATOへの加盟への意思、あるいは他の理由がプーチン大統領にとってどれほど許しがたかったのかは知らないが独立国に対して一方的に攻め入ったのは事実なので侵略と呼ばせてもらう。まず国際平和維持の最前線にいて、こうした紛争の際には必要な対策を採ることが期待される国連の安全保障理事会ではウクライナ侵攻を非難する決議に対してロシアが拒否権を発動して否決された。

国連が抱える問題

当たり前だ。

かつての湾岸戦争時にクウェートに侵攻したイラクを非難する安保理決議が採択されて多国籍軍が組織され、ごく短時間でイラクをクウェートからの撤退に追い込んだ、という実績も確かにあった。しかし拒否権を持っている常任理事国が非難決議の対象者であれば機能するはずがない。こんな大きな欠陥を抱えながら70数年もこの組織がそのまま存在していることに改めて驚く。

強力な核抑止力

核保有国が侵略戦争を起こしても国際社会はそれを武力で抑えることができないということもはっきりした。ウクライナは最初からNATO(北大西洋条約機構)の介入を求めているのにNATOやアメリカが武力行使に動く気配はない。ウクライナが加盟国ではないと言えばそうかもしれないが、将来的には加入させようとしていた国に対してかなりつれない態度だ。

もちろん核を持っている者同士の戦争にしたくないというのが本当の理由であることは疑いがない。全面核戦争にでもなればそれに関わった核保有国同士の主要都市が壊滅的な打撃を受け、これまでに経験したことないような夥しい数の人が死ぬ。その災禍を生き残ったとしても多くの場所が放射能に汚染され、黒い雨やら核の冬やらでとても不快な環境の中で暮らさなければならないだろう。これは誰にとっても嫌なことなので人類の暗黙の総意として核兵器は作られても1945年以降使われずに今日を迎えている。

そして今回核保有国による侵略戦争が起こり、世界最大の経済力と軍事力を持つアメリカとその仲間たちは今のところロシアに経済制裁を課し、多少の武器や物資を送ったものの軍隊を差し向けて使ってウクライナを助けることはしていない。これはロシアの「核による抑止力」が効いていることの証明と言って良いだろう。

一方で仮に核を持っていない国が核保有国に攻められても国際社会は武器を持って駆けつけてはくれないということの実例が示された。

「日本はアメリカと安全保障条約を結んでいるからウクライナとは違う」と本当に言い切れるだろうか?我々はよく考えなければならないだろう。

ロシア経済制裁

それはそれとして、現在ロシアの侵略に対して実行されている対抗措置は経済制裁である。

具体的には、

・ロシアの大手7銀行のSWIFTからの排除
・ロシア中央銀行の海外資産凍結
・ロシア政府幹部及び財閥の海外資産凍結
・暗号資産取引からのロシアの排除

等々。

ロシアの大手7銀行のSWIFTからの排除

「SWIFT(国際銀行間金融通信協会)」は、銀行間の国際金融取引を仲介する協同組合である。この組織が決済ネットワークを運営しており、そのネットワークシステムもSWIFTと呼ばれている。世界の半数以上の貿易決済がこのSWIFTを通じて行われており、現在では200以上の国・地域、11,000以上の金融機関に利用されていて1日あたり4,200万件の送金情報を取り扱い、決済額は約5兆ドル/日(日本円で約575兆円)に達する。加盟している金融機関にはスイフトコード(SWIFT CODE)が発行され、例えばHSBC香港のスイフトコードはHSBCHKHHHKHだ。

SWIFTから除外されると国際取引の決済に深刻な支障をきたすので各国はロシアとの貿易を控えるようになり、経済に大きなダメージがある。しかしロシアのトップの銀行他大手の銀行でSWIFT除外を受けていない銀行もあり、この制裁には抜け穴がある。欧州にはエネルギーをロシアからの輸入に依存している国が多く、代替の輸入元も急には見つけられないため最低限の決済ルートは残しておかなければならないからだ。

この措置は2018年に核開発を疑われているイランに対しても発動されているが、3年以上経ってもイランは破綻していないし、核開発もやめたという話は聞かない。イランは制裁解除を求め続けているようだが、SWIFT除外の効果はこの程度のものだという見方もできる。

ロシア中央銀行及び個人の海外資産凍結

個人に対する海外資産の凍結は嫌がらせの域を出ないだろう。プーチン大統領がそれで侵攻をやめることはないだろうし、同じく制裁を受けている高官や財閥も内心はどうあれそれで戦争をやめる進言などできるはずもない。

しかし中央銀行の資産凍結は結構大きなインパクトとなるはずだ。このことにより半分ぐらいの外貨が使えないということになり、ロシアの通貨であるルーブルは侵攻前のUSD1=80ルーブル近辺から一時150ルーブルまで下落した。これをきっかけにロシア中央銀行は9.5%だったルーブルの金利を一気に20%に引き上げ通貨防衛を図り、開ければ暴落が目に見えている株式市場は休場が続いている。外貨建て国債の利払いに窮し、「だったらルーブルで支払う!」と子供の喧嘩のようなことを言っているが、もちろんそんなことが通用するわけもなくデフォルト(債務不履行)となり、格下げによりもし戦争が終わっても今後しばらくは海外からの資金調達が困難になるだろう。現在ロシア国債を買っている側は損失を被るがそこは制裁を受けたロシアの個人同様大義のための我慢をすることになる。

暗号資産取引からのロシアの排除

暗号資産については”どうやってロシア向けの取引だけを事前に特定して防ぐのだろう?”と疑問に思っていたが最近アメリカ大統領令により司法省が動いて暗号資産全般の取引のより簡単に追跡するための仕組みを構築するという情報を耳にした。911以降タックスヘイブンが「テロ資金を生むマネーロンダリングを根絶する」という旗印のもと次々と潰されていった思い出がよぎる。。ロシアへの経済制裁を理由に暗号資産全体を把握するシステムをアメリカが握る、、まだはっきりしたわけではなく今後の動向をよく観察する必要があるが極めて有り得そうな話の流れである。

※この文章は2022年3月16日時点のものです。今後状況が変わることがあります

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