2022年3月から上昇を続け、2023年6月に5.50%に達した米国の政策金利。近年では最高といえるその水準は1年以上続き、2024年10月にFRBは利下げ方向に舵を切った。2ヶ月連続の利下げを経て、現在米国政策金利は4.75%となっている。

資産運用をする側に立つと高金利というのは収益が見通しやすい。預金や債券など低リスクの商品で高い利回りを見込めるからだ。運用資産の多くの部分をこうした固定利回り資産に振り向けて、残りで株式などリスク資産で頑張れば良いので比較的楽な時期であるかもしれない。収益が計算しやすいということは安心して高利回りの商品を発売できるということ。サンライフ香港をはじめとする香港の保険会社でもここ数年は貯蓄重視型保険が次々と市場にデビューした。

高金利と商品開発合戦

一度発売した商品の予定利回りを変えることはできない。一方で利上げが続くと競合他社もより利回りの良い商品を開発して発売する。競争に負けないためにはどんどん有利な商品を出してゆかなければならない。いわば開発合戦だ。運用環境がどんどん良くなってゆく中で激烈な競争が続くときに商品は飛躍的に進化するものらしい。満期が120歳などという超長期で運用が可能な上に、契約者や被保険者の名義変更が可能でその気になれば永遠に運用を継続できたり、証券を分割して複数の子どもたちに分けたり、運用通貨を途中で変更したり、将来の死亡保障金額が減額される代わりに初期の死亡保障額が2倍になったり、というこれまでにない画期的な機能がここ数年の間に生まれた。つまり現在の商品ラインナップは過去最高に有利な商品が揃っていると言っても過言ではない。

利下げフェーズの保険会社

しかし、高金利を背景に発売された商品は、利下げにより政策金利が下がってくると逆に足枷となってやがて保険会社を苦しめることになる。

自分たちは顧客に対して高利回りを約束しているのに、固定利回りで見込める収益が減ってくるのだから当然である。ある程度は株式市場での運用を強化するなどで頑張って成績を出すことになるのだが、現在はまだ4%以上ある政策金利が半分の2%にまで下がるようなことになれば努力だけでは追いつかなくなるだろう。

そうなると保険会社はどうするのか?約束した運用利回りを変えることなどできない。

では、赤字を垂れ流すのか?もちろんそんなことはしない。

解決方法

運用環境が悪化し採算が取れなくなれば、高利回りの商品の販売を停止すれば良いのである。今販売されている商品の供給が停止されるということは珍しいことではなく、これまでも数多く行われてきたことだ。ただ保険会社も金利が下がったからと言って、今年発売した商品の販売をすぐに取りやめるのは体面や信用にも関わることなのでできない。しばらくは上記のような運用努力で持ちこたえ、ある程度時期をみて棚にしまう形になるだろう。

それを実行するときには、利回り以外でエポックメイキングな機能を備えた新商品の発売を同時期におこない、目立たないようにすることも怠らないかもしれない。

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