非常にユニークな生命保険である。しかしある一定の層の人たちにとってはこれほど理に適った商品も少ないだろう。そしてそれはまず保険会社にとって合理的であり、それゆえにその層の人たちにも合理的なのである。
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保障重視型保険「サン・プロテクト(Sun Protect)」
2023年にサンライフ香港からリリースされた保障重視型の生命保険である。
ざっくりと海外の生命保険には貯蓄重視型の商品と保証重視型の商品がある。貯蓄重視型の商品は納付した保険料を株式市場や債券市場で運用して、積極的に資産を殖やしてゆこうという商品である。基本的にはある時期に解約して契約者が自分で解約返戻金を受け取ることを目標にしているので、死亡保障は解約返戻金と同額になる。本来は自分でその資金を使うために利用するものであり、万一のことが起こった場合にはその資産をスムーズに家族に返すために保険の機能を使っているに過ぎない。一方で保障重視型の生命保険は被保険者が死亡した場合に払い込んだ保険料の数倍〜十数倍という死亡保障が受け取れるものだ。「当たりたくない宝くじ」と呼ばれる由縁にもなっている伝統的な生命保険である。
その保証重視型保険のサン・プロテクトのどこがユニークかと言うと、まず契約から20年間に被保険者が死亡した場合に本来の死亡保障額の2倍が支給されるという点である。仮に保険金USD500,000の保険に加入するとすると、最初の20年の死亡保障はUSD1,000,000になるのだ。一方で存命のまま契約から20年間を経過すると、その後死亡保障は元のUSD500,000に戻った上でさらにそこから年々減額されてゆくことになる。例えば21年目の死亡保障はUSD500,000の97%のUSD485,000になる。それからの10年間死亡保障額は段階的に下がって行き、30年目には本来の死亡保障額の70%になる。死亡保障USD500,000のプランの場合、30年目には70%のUSD350,000になるということだ。この70%が下限であり、31年目以降の死亡保障はずっとUSD350,000のままとなる。実際にはこれに非保証リターンであるターミナルボーナスが加算されるので実際の解約返戻金や死亡保険金はそれより多くなるが、概ねそんな感じの設計であると理解してほしい。
さてこのサン・プロテクトという商品がなぜ保険会社にとって合理的か?それは統計的に人が死ぬ確率と払い出す保険料の大きさの関係にある。多くの人は年齢が高くなればそれだけ死亡の確率は高くなるので、契約後初期の20年に被保険者が亡くなる確率は低く、それ以降死亡確率は上昇してゆくことになる。つまり最初の20年間、死亡保障は2倍になるが、それが発生する確率は低い。翻って死亡確率は高くなる高齢時に保険金として払い出す金額は低くなっている。この構造により保険会社はコスト削減をできるので保険料を下げることができる。これが保険会社側の合理性だ。
この保険料が安くなるというのはもちろん契約者にとっての合理性でもある。ところが、冒頭に述べたある一定の層の人たちにとっては更に合理的だ。それは小さな子どもがいる人たちである。子どもがまだ学齢期でこの先高校生、大学生と進学するときには非常にお金がかかる。そんなときに万一、家族の大黒柱にもしものことがあったら大変なので、この間の死亡保障は大きくしておきたいのは人情だ。一方で、子どもが自立したあとであれば、それほど大きな死亡保障は必要でなくなる。残された配偶者が生活できるだけのものがあれば良いのでざっくりと子どもが小さい時代の半分とか30%とかで足りるのではないだろうか。だいたいの子どもは20年もすれば独立する。すなわち、契約21年目以降の死亡保障が減額される代わりに最初の20年間の死亡保障が2倍になるというのはこの層の人たちにとってすこぶる合理的であるのがわかっていただけるだろう。
【サン・プロテクト(Sun Protect)の運用例】
プラン名:サン・プロテクト(Sun Protect)
加入時年齢:40歳
性別:男性
喫煙の有無:非喫煙者
保険の種類:生命保険
保険料支払期間:20年
年間保険料:USD7,235/年
合計保険料:USD144,700
基本死亡保障額:USD500,000
10年後解約返戻金(50歳時):USD24,140(返戻率33.3%)※10年間の支払保険料USD72,350に対して
20年後解約返戻金(60歳時):USD185,500(返戻率128%)
30年後解約返戻金(70歳時):USD285,595(返戻率197%)
40年後解約返戻金(80歳時):USD412,685(返戻率285%)
10年後死亡保障(50歳時):USD1,002,435(死亡保障率1385%)※10年間の支払保険料USD72,350に対して
20年後死亡保障(60歳時):USD1,040,800(死亡保障率719%)
30年後死亡保障(70歳時):USD490,895(死亡保障率339%)
40年後死亡保障(80歳時):USD617,985(死亡保障率427%)
※いずれも非確定部分を含む概算
サン・プロテクト(Sun Protect)の特徴
商品タイプ | 保障重視型保険 |
運用資産組入比率 | 債券:60%-80% 株式等:20%-40% |
契約期間 | 終身 |
被保険者の年齢(加入時) | 生後15日-65歳(6年、12年払い)生後15日-60歳(20年払い)生後15日-55歳(25年払い) |
支払い期間 | 6年、12年、20年、25年、全期前納(※全期前納はすべての保険料を初年度に一括払いする形) |
途中引き出し・出金 | 不可 |
ローン借入れ | 可 |
保険料の支払い方法 | ・香港の銀行から引き落とし ・銀行送金 ・クレジットカード |
ボーナス | ターミナルボーナス |
居住地による申込制限 | あり |
健康診断不要要件 | 0-45歳:USD1,333,333以下の契約 46-55歳:USD666,666以下の契約 56-70歳:USD120,000以下の契約 |
商品の特徴 | ・最初の20年間は基本死亡保障金額の100%に相当する死亡保障額が追加される ・基本死亡保障金額は20年目から減額されて、29年目には契約時死亡保障額の70%に達しそれが下限となる ・基本死亡保障額にターミナルボーナスを加算した金額が実際の受取死亡保障額となる ・末期疾患前払給付金:被保険者が末期疾患と診断された場合、死亡保障額の100%が前払いされる※末期疾患の定義-診断日から12ヶ月以内に死亡する可能性が高いと医師が判断した場合 ・精神障害者に対する指定給付金受取人制度:契約者と被保険者が同一人物であり、家族を指定給付金受取人として指定することができる。被保険が精神障害と診断され、末期疾患前払給付金が適用される場合、指定給付金受取人は保険契約者の代わりにそれを受け取ることができる |
Sun Life Financia(サンライフファイナンシャル)とは?
Sun Life社は1865年にカナダのモントリオールで創立された世界最大の保険会社のひとつ。カナダのトロント本社の他、世界23カ国に拠点を構えて生命保険、健康保険、個人年金等々様々な金融サービスを提供している。トロント(TSX)、ニューヨーク(NYSE)、フィリピン(PSE)の世界3ヶ国の証券取引所の上場しており、フォーブス・グローバル2000やフォーチュン500にもその名を連ねている。Sun Life Hong Kongはその主要グループ会社です。
[Sun Life社の格付け:2024年時点]
スタンダード&プアーズ:AA(非常に強い)
ムーディーズ:Aa3(非常に優れている)
A.M.ベスト:A+(最も優れている)
[Sun Life HK社の格付け:2024年時点]
スタンダード&プアーズ:AA-(非常に強い)