最東端の南鳥島から最西端の与那国島までの約3,000km。最北端の択捉島から最南端の沖ノ鳥島までの約2,800km。
この範囲内に収まっている14,125の島が日本国である。領土の面積は約37.8万k㎡。これは世界で第61位。しかし海洋領土である排他的経済水域(EEZ)の面積は485万k㎡にも及びアメリカ、フランス、オーストラリア、ロシア、イギリスについで世界第6位である。
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海洋国家日本
海洋国家として日本は古来より海洋により大きな恵みとともに災いを受けてきた。豊かな水産資源は小さく険しい国土であるがゆえに農業に充てる耕地の少ない日本人の栄養を補った。海を隔てていたため、飛行機や大型船のなかった時代、外敵から攻撃を受けることが少なく、順調に独自の文化を育むことができた。
しかし、逆にこちらから外国の進んだ技術や文化を取り入れるにも渡航にストレスがかかり、内陸国ほどスムーズに物資や情報の交換はできなかった。そのおかげで幕末には技術力に大きく差のついた外国の前になすすべなく開国させられ、不平等な条約を押し付けられたことは言うまでもない。原因はそもそも日本が地政学的に良い場所に立地し、植民地獲得競争にやっきになっていた欧米列強がその中継や補給地点を日本に求めたからで、その地の利は後に貿易で日本の経済が発展する重要な要素にもなったのだが。
広大な海洋領土に対して小さな、そして天然資源に乏しい国土という条件で強力な海軍を持ち、それを背景に資源確保のために中国や東南アジアに進出し、ついには太平洋を隔てた隣国であり、国力で大きく勝るアメリカとの戦争そして敗戦につながったのは最大の災厄だったかもしれない。
日本のEEZ内の資源
さて、資源の乏しさに苦しんだ日本に近年朗報が飛び込んできている。日本のEEZ内で相次いで貴重な資源の存在が確認されているのだ。南海トラフや日本海近海で発見されたメタンハイドレート(天然ガスの成分であるメタンガスが氷状になったもの)は日本の天然ガス消費量の100年分の量があるという。
最東端に位置する南鳥島の近海では蛍光体、磁石、光学・ディスプレイ部材などハイテク・環境技術に不可欠なイットリウム・ユウロピウム・テルビウム・ジスプロシウムなどを含んだレアアース泥が発見されており、その埋蔵量は世界需要を数百年分賄えると期待されている。同じく最南端の沖ノ鳥島の周辺にもEV用バッテリー、再生可能エネルギー機器、電子部品・高性能磁石の原材料となるコバルト・ニッケル・プラチナを含む鉱床やマンガン団塊などが発見されている。
ただ、発見されたと言っても事はそう簡単には進まない。資源は場所によって6,000mの深海に埋蔵されており、現在の技術は大量に採掘できるところには至っていない。またそれを実行するためのコストも非常に高く、採算を取るのが難しい。研究機関などが画期的な技術の開発を急いでいるだろうが実用化できるのはいつになるかわからない。
他国からの横槍もある。日本固有の領土である竹島を不法占拠している韓国、そして尖閣諸島を狙って毎日のように領海侵犯を繰り返している中国など一部の国は沖ノ鳥島は「島」ではなく「岩」なので、その周辺は日本のEEZではなく公海であるという主張を繰り広げている。多くの資源の眠る海が日本のEEZでなく、公海ということになれば自分たちにもその開発ができる余地が出てくるので彼らにとってはそれは合理的な行動である。また特に太平洋での軍事的影響力を拡大したい中国にとっては、アメリカの同盟国である日本のEEZの大小が
大きな関心事であるのは間違いない。
沖ノ鳥島は干潮時には東西約5km、南北約1.7kmのサンゴ礁の地面があるが、満潮時には島の2箇所の高所がわずかに水上から顔を出す程度になる。そのため日本政府は1988年から護岸工事や消波ブロックの設置を行い、現在も桟橋や荷捌き施設の設置、サンゴの育成などによる島の維持活用策が図られている。
海洋資源活用の課題
広大な海洋領土とそのポテンシャルに思いを馳せれば、日本はやはり恵まれている。一方で将来に渡ってそれを護り、権益を維持してゆくには多大な労力と膨大なコストもかかる。2014年頃に中国の密漁船が小笠原のEEZ内に侵入して、中国で宝飾品として高値で取引されている赤珊瑚を根こそぎ盗っていったことがある。その時、日本の海上保安庁はそれに対して有効な手がほとんど打てなかったという。広い海域を防御するのはそれだけ困難だということだ。
おそらく高性能なレーダーや無人機などの科学技術を駆使して24時間体制で監視し、民間のトラブルには海上保安庁が、国家レベルのトラブルには海上自衛隊が効果的に展開しなければならないはず。人員も装備も今より大量に必要となり、技術開発力も高めなければならない。
少子高齢化に悩み、領海上でも様々な困難に直面する現状から、豊かな海洋資源を有効活用し、それで国の安全保障を強化し、さらにその恵みを享受できるようになる。そんな良循環が現実のものとなってほしい。