匿名性の高さ。怪しくもあり権力の管理から開放されているという自由の雰囲気もあり、どことなく甘美である。ひと昔前まではスイスのプライベートバンクとか絶海の孤島にあるタックスヘイブンの法人などが高い匿名性の代名詞のようなものであった。また1990年代出始めの携帯電話は匿名で持てたこともあったし、匿名性の高さはインターネットの普及・発展に大きく寄与したはずだ。

匿名性の高い仮想通貨

誰にだって他の人には知られたくないプライベートはあるのでその場合匿名性の高さはありがたい。だが人に知られずに活動できるということは犯罪の温床にもなるということでもある。なので国家や権力は常にこの匿名性を警戒して、無くしてゆく方向に動く。

上記に挙げたようなものからも匿名性は次々と引き剥がされてきた。ビットコインより後に開発されたアルトコインは様々な点でビットコインが持っていない機能を備えているがそのうち匿名性の高さを特徴としているものがいくつかある。具体的には、・ダッシュ(Dash)・モネロ(Monero)・ジーキャッシュ(Z-Cash)が有名なものだ。どれもがビットコインと同じように取引の承認作業(マイニング)によってマイナーに報酬が支払われて通貨量が増えてゆく仕組みは同じだが、それぞれの通貨には匿名性維持の方法や取引の速度などの面で違いがある。

ダッシュ(Dash)とは

「ダッシュ(Dash)」は2014年に発表され、2015年まではダークコイン(Dark Coin)という名前だった。Dashの匿名性保持の仕組みはプライベートセンドと呼ばれる技術。コインミキシングという方法で複数の人からの送金依頼が一旦管理ノードという場所に集められ、そこで一旦シャッフルするような形で混ぜて、誰から送られたDashコインかわからないようにして改めて送金先に送られる。送金者から受取人に届く金額には違いがないが、届いたコインは必ずしも送金者の手元にあったものではなく別の送金者のものかもしれない。こうすることにより送金元の追跡ができない仕組みになっている。最近の人気から時間とコストが余計にかかるようになっているが本来ビットコインの送金は10分程度で可能だ。一方ダッシュの取引スピードは非常に早く、数秒で取引が完了する。

[ダッシュ(Dash)のプロファイル]

発行日:2014年1月
トークン名称:DASH
総トークン供給量:2200万DASH
ブロックチェーン:Dash
アルゴリズム:X11
承認システム:Proof of Work/Proof of Service

モネロ(Monero)とは

「モネロ(Monero)」

エスペラント語で
コインという意味を冠したアルトコイン。モネロは匿名性に特化したCryptonoteというプロトコルを利用して「ワンタイムリング署名」を実装したアルゴリズムを採用している。リング署名はグループのメンバーであれば誰でも署名が可能で、検証者に対して匿名性を保証する
デジタル署名の一種。リング署名を経たメッセージは特定グループの誰かが承認するが署名した人を区別することができない。またモネロのアドレには閲覧用と送金用の二つの秘密鍵があり、それがマスターキーのような役割を果たす。モネロを送金する度にマスターキーがランダムなワンタイムアドレスを生成し、その宛先に送金をするため第三者がマスタキーとなるアドレスを見ても取引の履歴を確認することが不可能。閲覧用の秘密鍵を公開してはじめて第三者が取引履歴を閲覧することが可能になる。モネロは2、3分程度で取引処理が可能。

[モネロ(Monero)のプロファイル]

発行日:2014年6月
トークン名称:XMR
総トークン供給量:上限なし
ブロックチェーン:Monero
アルゴリズム:CryptoNote
承認システム:Proof of Work

しかしダッシュとモネロは送金履歴を秘匿はしていても送金アドレスと送金額は公開されている。

ジーキャッシュ(Z-Cash)とは

「ジーキャッシュ(Z-Cash)」は「ゼロ知識証明(Zero-knowledge Proof)」という技術を使っている。ゼロ知識証明は自分の持っている命題が真であることを伝えるのに、真であること以外の知識を何ひとつ伝えることなく証明できる手法だ。これを暗号通貨の取引に落とし込むと「誰がいくら送金したという情報を第三者に公開しなくてもその取引が正しいということの証明可能」ということになる。送金元と送金先にだけ公開される秘密鍵(プライベートキー)が発行され完全にその二者間だけで送金情報がシェアされるにもかかわらず第三者が承認作業をすることが可能ということになる。

これによりジーキャッシュはダッシュやモネロと違い、アドレスや送金額も秘匿できるようになっている。

[ジーキャッシュ(Z-Cash)のプロファイル]

発行日:2016年10月
トークン名称:ZEC
総トークン供給量:2100万ZEC
ブロックチェーン:ZCash
アルゴリズム:Equihash
承認システム:Proof of Work

ジーキャッシュの技術の高さは注目を浴びており、米国の大手銀行であるJPモルガンはジーキャッシュと提携してその匿名性に関する技術を自社のブロックチェーンプラットフォームであるQuorumに取り入れることを発表している。Quorumはもともとイーサリアムの技術を基にしているので、スマートコントラクトとゼロ知識証明が融合することになる。

一方、モネロやジーキャッシュはその匿名性の高さからかインターネット上で違法薬物や模造品、武器などが取引できるアルファベイ(Alphabay。現在は閉鎖)で決済手段として使えるようになっていた過去もある。これは匿名性を違法な取引に利用したいという需要の現れであると言える。

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