「保険診療」と「自由診療」

社会保険法や国民健康保険法で定められている診療の区別である。保険診療は健康保険が適用される診療の種類で健康保険証を持っている人は3割以下の自己負担で受けることのできる治療のこと。

一方自由診療というのは健康保険が適用されない治療のこと。つまり病院で自由診療とされる治療を受けると医療費が全額自己負担となる。自由診療にはほくろやイボの除去、美容整形、レーシック、歯科矯正など医療行為ではあるものの健康の回復や維持には必ずしも必要はなく、個人的な嗜好に関連したものや通常の妊娠・出産などがある。これらは公的な健康保険でカバーされなくてもなんとなく納得はできるのではないかと思う。(妊娠・出産には別途出産助成金がある)

ところが保険適用外の自由診療のカテゴリーの医療のひとつに「先進医療」というものがある。先進医療は厚生労働省から健康保険適用の対象にするかどうかの判断が出ていない比較的新しい医療技術や新薬を用いた治療のことである。先進医療というぐらいだから世界の先端を行くような科学者がしのぎを削って開発しているので効果的なものが多い。致命的な重病が治る可能性があるのならぜひその治療を受けてみたいというのが当然の欲求ではあるが役所の判断が追いついていない。そのため治療を受ける際に公的医療保険の適用が受けられずに医療費を全額自己負担しなければならないのである。

美容整形や歯科矯正などと違って命に関わる問題なのだから何とかしてほしいところだがそうは問屋がおろさないのが世の中である。また先進医療は最先端の技術を駆使しているので治療費も結構高い。例えば先進医療のがんの遺伝子療法やがんワクチンでの治療を受ける場合1クールで150〜180万円の治療費が必要だ。

「重大疾病保険(Critical Illness Insurance)」は生命保険の一種である。通常の生命保険と違うところは死亡したときの死亡保障が出るのみならず、契約で指定された様々な病気になった時点で保険金が支給されることだ。日本で言えば「がん保険」あるいは「三大疾病保険(がん、脳卒中、心臓病)」がそれにあたる。通常これら日本の疾病保険の主な内容は以下の3つである。

診断給付金:指定の疾病と診断されると支払われる一時金(例:がん診断で100万円の診断給付)

入院給付金:治療のための入院日数に応じて支払われる給付金(例:治療のための入院で10,000円/日)

手術給付金:治療のために手術をおこなった場合に支払われる給付金(例:10万円/回)

それ以外に特約で、退院後の通院に対して支払われる通院給付金や先進医療を受けるための先進医療給付金、あるいは放射線治療や抗がん剤治療を受けると支給される給付金を別途設定できるようになっている。社会保険や国民健康保険などの公的医療保険で治療費の7割まではカバーされるが、最高3割は自腹で出さなければならないし、先進医療を利用する場合は全額自己負担となる。4人以下の病室に入院した場合の差額ベッド代や治療で仕事を休んでいる間の収入ロスを補填することもできない。そうした負担を軽減してくれるのが重大疾病保険ということになる。

海外の保険会社でももちろん重大疾病保険がある。しかしその内容は日本のがん保険や三大疾病保険と結構違う。まずカバーされる病気の範囲が非常に広い。三大疾病はもちろんのこと、他にも糖尿病やアルツハイマーなど100種類以上の病気に対応している。また入院給付や手術給付というように細かく条件が分かれておらずすべて病気に罹患した時点で診断給付金として一括で支払われるので自由度が高い。

貯蓄性のある終身保険なので長期加入した後に解約すると解約返戻金がある。解約返戻金が支払い保険料を上回る損益分岐点はだいたい17〜19年である。通常の生命保険の場合、損益分岐点は12〜14年なのでそれよりは時間がかかることになる。死亡するよりも病気になる確率の方が高いのでそうなるのは当然といえば当然だろう。日本人が海外居住となった場合、日本の公的医療保険は利用できなくなるので民間の保険会社が販売している医療保険を利用することになる。もちろんこの医療保険も実際にかかった医療費を基に払い戻しをする形になるので、重大疾病保険を併用するのは効果的である。

 

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