2021年は年初から年末まで世界のほとんどの国・地域で海外との渡航制限、また渡航したとしても渡航後・帰国後の隔離措置に見舞われた年。

運輸業や旅行などの産業は引き続き痛手を被った一方で国内では緊急事態の解除による日常生活の復活やスポーツ・イベントなどの入場制限の緩和でかなり回復している産業もあり、ITや巣篭もり需要に適合した企業などこの特別な環境が業績的に良く作用する産業もありで明暗を分けながらも全体的には景気回復の方向にあったと言って良い。

2021年の景気回復

世界中で一年以上も続く低金利と大規模金融緩和でアメリカでは6%の高インフレが発生、日本はまだデフレが解消されたかどうかという段階だが、インフレ傾向にある国を大勢を占める。エネルギー価格の高騰、海上物流の逼迫、半導体をはじめとする一部工業製品の不足などでコスト高から発生する悪性インフレの懸念も出ている。

2021年の各国株式市場動向

そんな中、金融緩和にともなう各国中銀による資産買い入れの影響もあり株価をはじめとする資産価格は引き続き高騰している、、というイメージを持ちがちだが実際は昨年初と今年初の株価の動向を見ていると国によって様相が違ってきているのがわかる。

2021年年初1月4日終値で28,139.03円だった日経平均株価は2022年1月2日終値で29,361.79円、年間の上昇は6.5%。

2021年9月半ばに30,600円台とバブル崩壊後の最高値をつけてから少し下の水準で推移、年間を通してみると小幅な上昇だった。

NYダウは2021年年初の30627.47から2022年初日終値36799.65とこちらは33%の大幅上昇、相変わらず右肩上がりで「今が最高値圏」である。

上海総合は2021年年初の3502.958から2022年初は3614.21とほとんど同水準。

香港ハンセン指数に至っては2021年年初の27472.81から2022年初は23274.75と年間を通して19%もの下落になった。

中国恒大集団をはじめとする香港株式市場に上場している中国系デベロッパーのデフォルト懸念が昨年は大きなマイナス材料になったとはいえ、主要国の株式市場では目立つ大幅下落だ。

ドイツのDAXは2021年年初の13726.74から2022年初は16020.73への20%以上の上昇、

英国のFTSE100は2021年年初の6571.9から2022年初の7505.15へと13%の上昇、

フランスCAC40は2021年年初の5588.96から2022年初7217.22へと約34%の大幅上昇となっている。

新興国市場ではインドのSENSEXは2021年年初の48176.8から2022年初は59183.22へ41%の大幅上昇。

一方でブラジル・ボベスパ指数は2021年年初の118558から2022年初は103922へ-24%の大幅な下落。

2022年金融市場における変化を察知する

新型コロナ流行が本格化し始めた3月頃に世界の株式市場が一斉に暴落してから一様に右肩上がりの上昇を続けてコロナ前の高値を更新し続けた2020年とは明らかに傾向が変わり国・地域ごとにばらつきが出てきている。これが通常の状態でその状態に戻ったと言えばそれまでだが、ある種官製相場的な上昇に慣れてきた我々は感覚のシフトチェンジが必要なときかもしれない。

2021年12月15日、米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(米連邦公開市場委員会)で資産買い入れによる資金供給の縮小を意味するテーパリングの加速が発表されと2022年には3回程度の利上げを行うことが示唆された。翌12月16日、英国の中央銀行であるイングランド銀行は政策金利を0.15ポイント引き上げ、年0.25%とすると発表し、日米EUに先駆けて3年4ヶ月ぶりの利上げに踏み切っている。日本銀行は明確な発表こそないが資産買い入れのベースはかなり下げてきていることが推測される。

一方現時点で重症化率は低いが感染力の強いとされるオミクロン株が急速に広がっており、逆戻りする可能性も皆無ではない。各国中郷銀行の金利発表、その動向を左右するインフレ関連指数(消費者物価指数CPIや生産者物価指数PPI)、雇用統計などの各種指数の動向は特に神経を使って注視しながら対策を考えることが重要な2022年になるだろう。

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