2020年3月3日、米国FRB(連邦準備制度理事会)が0.5%の利下げを発表、政策金利は1.00%〜1.25%に。

3月5日、カナダ銀行が0.5%の利下げ、政策金利は1.25%に。

3月11日、英国イングランド銀行が0.5%の利下げで政策金利は0.25%となった。

金利はなぜわかりにくいのか?

一方で、

3月6日、米国債価格が急上昇し、長期金利が過去最低の0.7%を割り込んだ。

3月9日、日本国内債券市場の長期金利が-0.2%達した。

「金利は経済の体温」

そう言われるように金利は投資をしてゆくうえで非常に重要な要素である。だが金利はわかりにくい。

(A)中央銀行が人為的に金利を上げ下げしているような記事もある。

(B)市場の原理で金利が動いているような記事もある。

(C)債券価格が上がると金利が下がるような記事もある。

(D)そもそも何故政策金利が1%以上あるのに長期金利(0.7%)の方が低いのか?定期預金の場合は確か長期の方が利息は高くないか?

いったいどうなっているのか???

そう感じている人は少なくないはず。

金利は大きく分けて短期金利、長期金利という2つがある。

それぞれの定義を調べると、

短期金利は「金融機関が期間1年未満お金を貸し出す際に適用する金利」

長期金利は「金融機関が期間1年以上お金を貸し出す際に適用する金利」

と書いてある。

しかしこれがわかりにくい一番の原因ではないかと思う。短期金利と長期金利はまったく別のものである。100%無関係でもないが、渡哲也と錦織圭の親戚関係ぐらいの遠い間柄である。ほぼ他人であるこの2つに同じ「金利」という名前をつけるからややこしくなるのだ。

なのでこの定義は一旦忘れてここでは以下のように呼ぶことにする。

短期金利は”金利くん”
長期金利は”イールドくん”

短期金利の”金利くん”

“金利くん”は「無担保コール翌日物金利」のことである。銀行は預金者から預かった預金を融資に出したり、運用したりしているので普段支店にそれほど多くのお金を置いていない。

なのでもし大口の出金があった場合、一旦他の銀行のお金を借りて引き出しの資金を調達したりすることがある。実際は民間銀行同士で簡単にお金を貸し借りできる場所があり、そこで借りることになる。その場所が「コール市場」と呼ばれる。コール市場で借りたお金はほとんど翌日には返済されるので担保は取らないことになっている。だから「無担保」であり、「翌日物」なのである。ただ一日だけの融資とは言え金利はしっかり払う必要があり、それが「無担保コール翌日物金利」だ。

この他「政策金利」という言葉もあるが、これは中央銀行が決定する短期の金利誘導水準のことである。中央銀行は金融政策として景気の状態を見て金利を利率を上下させる。景気が悪い、というのはお金の流れが悪い状態なので金利を下げてお金を借りやすくさせて、流れを良くさせることが景気対策になる。逆に景気が良すぎて加熱気味になると物価が上がりすぎたりしてこれもまた困るので金利を引き上げてお金の流れにブレーキをかける。

で、日本の政策金利は「無担保コール翌日物金利」のことである。つまり政策金利=短期金利、どちらも”金利くん”なのである。つまりこの”金利くん”は中央銀行によって人為的に決められたものだ。

長期金利の”イールドくん”

次に”イールドくん”。

これは「10年物国債の利回り」のことである。国債の金利は発行されるときに決められる。つまり満期までに受け取れる金額はその時点で決まっている。例えば、元本100円年利2%で発行された10年物国債は満期までに合計120円が受け取れることが決まっている。

一方、債券は一旦発行されたあと償還までの10年の間に債券市場で売買することができる。受け取れる金額が決まっているものを売買するので高い価格で買えば利回りは低くなり、低い価格で買えば利回りは高くなる。債券価格が上昇すると”イールドくん”は下がり、債券価格が下落すると”イールドくん”が上がる、ということになる。一般に景気が悪くなると債券価格が上昇する(”イールドくん”は下がる)。

これは景気が悪化すると株価が下がるので、機関投資家など大口の投資家がそれを嫌って株を売却し、先を争うように債券を買うから価格が上がるのである。景気が良くなるとこの逆の流れになる。すなわち”イールドくん”は人為的に決められるようなものではなく需要と供給によって増えたり減ったりするのだ。

ここで冒頭のニュースを再び読んでみる。

2020年3月3日、米国FRB(連邦準備制度理事会)が0.5%の利下げを発表、”金利くん”は1.00%〜1.25%に。

3月5日、カナダ銀行が0.5%の利下げ、”金利くん”は1.25%に。

3月11日、英国イングランド銀行が0.5%の利下げで”金利くん”は0.25%となった。

一方で、

3月6日、米国債価格が急上昇し、”イールドくん”が過去最低の0.7%を割り込んだ。

3月9日、日本国内債券市場の”イールドくん”が-0.2%達した。

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