物件価格4,000万円の都内の新築マンションを頭金1,000万円で購入する。残額の3,000万円は固定金利1.5%、35年元利均等返済(返済期間を通じて返済額が一定の返済方法)のローンを利用する。すると毎月の返済額は91,855円になり、これを35年(420ヶ月)で完済することになるので合計の返済額は38,579,007円となる。

この他に登記費用や住宅ローン借り入れ費用、修繕積立基金等の諸費用で約150万円かかるのでこの物件の購入代金は

1,000万円+3,858万円+150万円=5,008万円

住み始めてからは毎年の維持費用が発生する。

管理費、修繕積立金、固定資産税、火災保険料などでざっくり毎年70万円ぐらいとしてローンを払い終えるまでに2,450万円の維持費がかかる。35年間自分の持ち家に住み続けるコストは合計で7,458万円。

片やこのマンションを賃貸する費用。

東京都内での賃貸利回りが仮に4%だとして年間の賃貸料は4,000万円X4%=160万円、月々の家賃は13.3万円。もしそこに35年間住み続けて2年に一度家賃1ヶ月分の更新料を支払うとすれば合計438ヶ月で総コストは5,825万円だ。

オーナーとして35年間同じ物件に住み続けて合計7,458万円を支払い、手元には中古マンション物件が残る。テナントして35年間同じ物件住み続けても不動産は残らないが費用は5,825万円。

7,458万円-5,825万円で差し引き1,633万円。

35年後にこのマンションを売却して手元に1,633万円残ればオーナー人生とテナント人生はブレークイーブン。売却時にも仲介手数料をはじめとした費用がかかるので1,750万円ぐらいで売却できれば持ち家の場合の収支と賃貸の場合の収支がトントンになるということだ。それ以上の価格で売却できれば投資効率面ではオーナーを選ぶ方が有利、それ以下でしか売れなければテナントを選ぶ方が有利となる。これぐらいであればそれほどの差はなくどちらもあり得る。

もう少し突っ込んで考察してみる。

最初に持っていた1,000万円。持ち家にした場合は頭金として支払ってしまうことになるが、賃貸を選んだ場合はその現金を運用することができる。例えばそれを記述の賃貸利回り同様4%で運用すれば年間40万円の収益が得られることになり、160万円/年かかる家賃を120万円/年(10万円/月)に圧縮することができる。これを35年換算すると賃貸コストの総額は4,380万円に下がる。

そして元本毀損なしと仮定して、その償還を受ければ1,000万円の現金が手元に残ることになる。持ち家を選択したケースとの差は7,458万円-4,380万円=3,078万円。さらにテナント人生を選んだ場合は現金1,000万円も手元にあるので、その収支を上回るためにはオーナー人生は手元に残る原価4,000万円の築35年のマンションを4,078万円以上で売却しなければならないということになる。もし35年後に東京に住みたい人が爆発的に増えて不動産価格が暴騰すればありえないことではないが現実的にはかなり厳しい。

もちろん自分の住んでいる場所が自分の所有物であるという安心感・満足感はこうした収益計算では測りきれないものであり、家は充実した人生を送るための重要な”買い物”であるというのもひとつの考え方として否定はできない。

ただ経済合理性という一点から見ると、ローンを利用して自宅を購入する行動が間違いないのは戦後から1980年代ぐらいまでの日本のように不動産が右肩上がりのタイミングにおいてのことであり、それ以外のときは自己資金を超える自宅を購入するより投資しながら賃貸生活に軍配が上がるのだ。

※文中では計算をシンプルにするため税金は考慮していない

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須