「消費税還付」は消費税の申告義務のある課税事業者が払いすぎた消費税を取り戻せる制度である。消費税は消費者が商品を購入した場合に負担するもので2018年10月の時点では税率8%分が商品価格に含まれる形で徴収されている消費税は商品を販売している事業者が一旦消費者から預かり、確定申告でまとめてそれを税務署に納付することになる。

しかし事業者も仕入れをしたり、備品を買ったりしたときに当然消費税を支払っている。なので事業者は預かった消費税から支払った消費税を引いた差額を納めるのが原則である。そのときに支払った消費税の方が受け取った消費税より多い場合その差額は戻ってくることになっている。

不動産賃貸業における消費税還付

この消費税還付が不動産投資の際に利用できるメリットとして以前より取り上げられてきた。そもそも消費税還付を受けるためには消費税の課税事業者であることが必要だ。一方アパート・マンションなどの物件を購入してそれを住宅用に貸し出す大家さんは本来課税事業者になる必要はない。なぜならアパートからの家賃収入は非課税売上と言って消費税の納付が免除されているからだ。

しかし以前多くの大家さんは「課税事業者選択届出書」を提出して消費税の課税事業者となった。なぜなら不動産を買う際に支払う消費税の額は大きく、それが還付されるのはとても魅力的なことだからだ。

例えば土地価格5,000万円、建物価格1億円、合計で1億5,000万円の物件を購入するとする。このうち消費税は建物のみにかかるのだがそれでも800万円近い金額を納税しなければならない。何もしなければ消費税の非課税事業者なのでその消費税は払いっぱなしになるが、消費税の課税事業者になり課税売上を少しでも作ることによって還付を受ける資格を得ることができる。

消費税還付をめぐる税法改正

かつては自動販売機設置スキームと言って課税売上である自動販売機を設置してその僅かな消費税分を納税することにより不動産購入時に支払った多額の消費税の還付を受けるという方法が広く使われていた。非常に簡単に消費税を取り戻すことができたのだが税収の減る国はそれを問題視した。

2010年3月の税法改正で「課税事業者選択届出書を提出してから2年以内に不動産(調整対象固定資産)を購入・新築した場合はその後3年間は免税事業者・簡易課税業者への変更ができない」ということになった。ところがその後も「抜け道」は残っていた。課税事業届出書を提出してから2年間放置して3年目に不動産を購入すれば消費税還付が受けられるという余地が残っていたからだ。

2016年の税法改正において国は「建物などの高額資産を購入したり建設したりした人はその後3年間消費税の免税事業者になることも簡易課税を選択することもできない」という規定でその方法を塞いだ。

不動産賃貸業と消費税還付の現状(2018年時点)

2018年現在、賃貸用不動産購入時の消費税還付を受けるには物件購入後3年間課税売上割合を50%以上に保つ必要があるとされている。課税売上割合とは全体の売上に占める課税売上の割合で数式にすれば「課税売上割合=課税売上÷(課税売上+非課税売上)」となる。

不動産賃貸業にとっての非課税売上とは居住用物件からの賃貸収入、礼金、預金利息、貸地料。不動産賃貸業にとっての課税売上には自販機の売上、商業物件や駐車場からの賃貸収入、民泊による収入などがあるが課税売上は必ずしも不動産からの収入でなくても良い。世の中のほとんどの売上は課税売上なので例えば貿易や小売店での物販などで売上があればそれを算入することもできる。つまりなんでも良いので課税売上が非課税売上を超えれば条件を満たせることになる。

ところが通常、はじめて賃貸経営に乗り出す人がひとつの商売を立ち上げて課税売上を作ることは容易ではない。そこで利用されているのが法人名義での金地金の売買である。金は単価が高く、取扱業者を通じて簡単に売買ができる一方でその売買を法人の売上に算入することが可能である。現時点で残された「抜け道」であると言えるがこのスキーム自体は何ら違法性のあるものではない。しかしこれまでの経緯を見れば、今は利用可能な方法もいずれ何らかの法的対策を講じられ、塞がれる可能性は否めない。

特に来年2019年10月消費税率が8%から10%に上がる。これは国側からすればしっかり対策しないと取りっぱぐれが多くなるということである。

抜け道的なメリットはいつまでも残るものではなく利用可能な時間は限られているひとつの良い事例である。


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