民泊。ホテル経営が一般庶民の身近にあった数年


「民泊」の出現はある意味、賃貸不動産物件を持っている大家さんにとって画期的な出来事だった。

サラリーマン大家という言葉が耳に馴染むほどにアパート・マンションの比較的長期の賃貸に出す物件経営は一般化してきたがホテルの経営というとまだまだ敷居が高いという雰囲気がある。しかし民泊はそうした長期賃貸物件をホテルのように運用する道を拓いた。

一般庶民にホテル経営の道を拓いた「民泊」

アパート・マンションなどの物件はロケーションや構造、築年数によって利回りが決まっており、多くの場合それを劇的に改善することはできない。(物件を市場価格より大幅に安く手に入れるノウハウやスキルを持っているならまた話は別であるが、、)

リノベーションをしたり、無料Wifiや最先端のセキュリティシステムを導入するなどで多少の調整は可能かもしれないが周囲の相場から著しく逸脱した高額の家賃を設定するのは困難だ。そうした賃貸物件経営の成否はすべからく予定の利回りを達成するために満室にできるかどうかの勝負になってくる。

ところが物件をホテル化することができれば話はまったく違ってくる。なぜなら部屋は月単位で貸すより、日単位で貸した方が多くの宿泊料(家賃)が受け取れるからだ。

例えば15m2ぐらいのビジネスホテルに1泊8,000円で泊まるのはあまり抵抗はないだろうが、同じ部屋に月24万円払って住みたいと思う人はほとんどいないはずだ。宿泊期間が1日か、あるいは長くて数日だから高いと感じずにすんなり支払えるのである。逆に考えれば自分が持っている賃貸物件を1日単位で貸すことができれば収益・利回りを大幅に伸ばすことができる。

民泊経営の採算

以下は以前僕がAirbnbを通じて2泊利用した東京の神田にあるワンルームマンションの宿泊費である。(香港で予約したので香港ドル建てだ)

HKD600.5/泊x2泊:HKD1,201
清掃料金:HKD264
Airbnbサービス料:HKD176
———————-
合計:HKD1641

1泊あたりの支払い:HKD820.5(約11,897.25円※1)
※1)HKD1=JPY14.5

東京のホテルの稼働率は約80%なので24日稼働できるとすれば売上は285,534円となる。

一方、民泊を運営するにはAirbnbなど宿泊予約サイトへの手数料、宿泊者の募集から清掃などを請け負う代行業者の手数料、消耗品や光熱費などの費用がかかる。これが合計でざっくり25%かかるものとして計算すると約21万4千円が収入になる。神田にある1Kマンションの家賃相場は8万円〜12万円程度。真ん中の値を取って10万円として、マンションの賃貸管理の手数料は5%が相場なので収入は9万5千円だ。この他共益費やローン支払いなどの費用がかかるがこれはケースによってまちまちなので割愛するとして、民泊をおこなうことにより収益が2.2倍になる試算が可能だ。

またこの地域の中古ワンルームマンションの価格は2,000〜2,500万円ぐらいなので賃貸マンションとしての利回りはざっくり5%程度だが民泊運用では13%〜15%を見込むことも不可能ではない。というわけで、数年前より賃貸物件の民泊運用が合法営業・違法営業を含めて爆発的に増えたのである。

民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行

ところが2018年6月「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が制定されて、民泊事業を営む場合は都道府県知事に届け出が必要になった。受理されるためには衛生面や安全面での基準にかなった設備が必要になったり、所在する自治体の条例に沿った環境設定をしなければならない。つまり届け出をするだけでもある程度の手間とコストがかかってしまう。

その上、特区民泊(※2)という特に定められた地域以外の場所では年間180日しか営業できないという制限ができた。※2)2018年11月時点での特区民泊は東京都大田区、大阪府、北九州市、新潟市、千葉市。1年間のうちの半分弱しか民泊としての営業ができないことになれば期待できる収益・利回りは長期賃貸とそれほど変わらなくなる。かくして一旦一般庶民である我々にも身近になったホテル経営はまた少し遠いところへ行ってしまったのである。


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