2020年7月1日の香港返還記念日に施行された香港国家安全維持法による取り締まりがはじまっている。

・国家分裂
・政権転覆
・テロ活動
・外国勢力と結託して国家安全に危害を加える行為

の4類型を中国に対する犯罪として定めて刑事責任を問うという香港国家安全維持法。香港内に住む香港人や外国人はもちろんのこと海外にいる香港人もこの法の適用を受けるのはまあ仕方ないとして、海外にいる外国人まで適用範囲内になると謳ってあることが多くの人を驚かせた。

HSBC香港口座に対する懸念

そして実際に指名手配や逮捕者が出て緊張感が高まっているせいか、ここにきてHSBC香港口座について何件か質問が寄せられている。「このままHSBC香港にお金を入れておいて大丈夫でしょうか?当局の意向で資産が凍結されてしまうようことはないでしょうか?」との心配の声だ。

HSBC香港の歴史

HSBC香港(香港上海銀行)が設立されたのは1865年。それから遡ること13年前の1942年アヘン戦争後の南京条約で英国が清から香港島を割譲を受けた。その香港に本店、同時に清の上海に支店を置いたのが始まりだ。翌1866年には横浜支店が開設されている。大政奉還直前のことなのでHSBCの日本進出はギリギリで江戸時代のことになる。

1971年新貨条例により円が誕生するときにはHSBCは日本の新貨幣鋳造のアドバイザーとなり、1880年に日本で最初の外為銀行である横浜正金銀行(のちの東京銀行→三菱東京UFJ銀行)の発足の支援もしている。日本が圧倒的に不利と見られていた日露戦争の戦費調達のための外債発行でもHSBCが大きな役割を果たし、日本の大方の予想を覆す勝利に貢献したこともある。HSBCはそもそも当時世界中に広がっていた英国植民地で英国人貿易商が獲得していた利益を本国に送金する目的で開設された銀行である。

その中には当時の中国(清)に深刻な災禍をもたらしたアヘン貿易で大きな利益を挙げていた貿易商からの送金も含まれる。そんな黒い資金も扱いながら、各植民地のプランテーション事業などまともな企業経営のファイナンスもやりながら19世紀中には日本、中国、インド、東南アジアに、20世紀に入ってからはドイツやアメリカをはじめとした欧米諸国との取引を拡大していった。要するに近代的な金融システムや外国為替が確立するはるか以前、個人はおろか各国の大手銀行さえも海外との資金移動が極めて難しかった時代に世界最大の版図を誇っていた大英帝国内で金融サービスを提供するという優位点を享受することができた。

当時すでに抜きに出ていた支店ネットワークを活かし各地から資金を調達して、アメリカの経済成長時には米国株式市場に投資し、第2次世界大戦時にはのちに戦勝国となる英国債を購入したりという他の金融機関が追随できないようなことをおこなって資本を蓄積してきたことになる。終戦後は香港最大の地場銀行であった恒生銀行の他中南米や中東などの現地銀行の買収を進め、現在は70カ国以上に10,000以上の支店を持つ世界で最も活動地域の広い銀行となっている。

香港の中国への返還が決まったあとの1991年、ロンドンにHSBCホールディングス(HSBC Holding plc)が設立され、HSBCグループの登記上の本拠地を香港から英国に移転している。金融自由化が進んだ1990年代後半以降、海外に銀行口座を持って資金を分散しておきたいというニーズに対して人気の目的地となったHSBC香港に預金している日本人はかなりの数にのぼる。

HSBC香港口座の今後

「このままHSBC香港にお金を入れておいて大丈夫でしょうか?当局の意向で資産が凍結されてしまうようことはないでしょうか?」昨今の香港を取り巻く政治的な流れからこのような心配の声が出てくるのも無理もないことだ。

もちろん世の中に起こり得ないことなどないが、過剰に心配しすぎる必要はない。そもそも中国本土にはすでに香港を大きく上回る数の外国人が住んで生活をし、資産も保有しているがそこに何ら問題があるわけではない。確かに香港の一国二制度が徐々に失われているのは否めないものの司法制度、通貨制度、税制など中国本土とはまったく違う形態で存在しているものはまだ多い。百歩譲って万一そうしたものが今すべて本土の制度に塗り替わったとしても、最悪でも現在外国人が中国本土に資産を持っているのと同様の状態になるだけと考えるのが妥当だろう。

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