税制の属人主義と属地主義。

国が誰から税金を徴収するか、という概念の違いのことである。この点で世界の国は属人主義の国と属地主義の国の2種類に分かれる。属人主義の国はその国の国籍を持っている人から税金を徴収することを原則としている。属人主義の国の国籍を持った人は世界のどこに住んでいても本国に納税することになっている。

日本人が持つ海外不動産の納税

アメリカやフィリピンは属人主義だ。米国人は海外に居住していてもアメリカ本国に納税する、だから世界のどこにいても税金の負担は変わらない。一方属地主義の国は現在その国に住んでいる人から税金を徴収することを原則としている。自国民か外国人かを問わず、居住している国に納税する。世界のほとんどの国は属地主義の税制を採っている。

日本も属地主義だ。だから日本よりも税率の低い国に移住すれば合法的に節税ができる。その要素も含めてトータルで海外資産運用を考えるメリットについては何度かこの場で伝えてきた。日本居住者が海外で購入した不動産を通じて節税をおこなう手法はこのちょうど逆の効果を持つ。つまり日本居住者であるがゆえに海外の資産を内国法によって取り扱うことができる点に着目した手法。

日本は属地主義だから日本に住んでいる人は当然日本の法律に従って納税する。すなわち日本居住者が海外に不動産を購入して賃貸収入を得ればその所得は日本での課税対象になる、と同時に関連の規定もすべて日本のそれに従うことになる。

不動産の減価償却費

減価償却費は購入した不動産の建物部分の価値を法定耐用年数で按分して経費に組み込むことのできる勘定科目だ。減価償却費は老朽化によってモノの価値が減ってゆくことを法律上認めてその金額を経費として計上するものであるから経年により価値の減らない土地には適用されない。

日本では木造アパートの耐用年数は22年と規定されている。例えば1億円(土地価格7,800万円、建物価格2,200万円)の新築木造アパートを購入した場合毎年100万円(2,200万円÷22年)を経費に計上できる。この100万円は実際には手元から出ていってはいない帳簿上の金額だが課税所得から引いて納税額を下げることができる。

また築22年を過ぎた中古の木造アパートはすでに価値がゼロになっているはずだが、それを購入した人には4年の減価償却期間が与えられることが法律で認められている。実質的な建物価値が400万円と算定されればそこから4年間100万円ずつの経費計上が可能になる。築古物件を購入する人の特典みたいなものである。

日本の不動産と米国不動産における土地と建物の価値の違い

ところで国土が狭く山がちで比較的居住できる土地の限られた日本は土地が高く、一般的に物件価格の7〜8割が土地の価値とされている。一方、広いアメリカでは逆に土地価格が安く物件価格の7〜8割は建物の価値になっている。仮に日本と米国で1億円の築30年の木造アパートがあったらざっくり、

日本では土地価格が8,000万円に対し建物価格が2,000万円、
米国では土地価格が2,000万円に対し建物価格が8,000万円、

という具合になる。

米国不動産の売却(エグジット)

日本居住者がこれを購入する場合どちらも4年間の減価償却費を計上できるので日本の不動産を買った場合は毎年500万円なのに対し、同じ金額で米国不動産を買った場合は毎年2,000万円も課税所得を下げることができる。これが年収3,000万円〜5,000万円の高額所得者にとって大きな節税になるのは言うまでもない。

さて4年間の減価償却が終わったあと、今度は節税メリットのなくなった不動産を売却することになる。物件を持っていれば賃貸収入を得られるがそれは課税所得を増やすことになる。別の物件を買ってまた4年の減価償却を享受するのが得策だ。ところが不動産は取得した年から数えて5年以内に売却すると短期譲渡とみなされて所得税・住民税が多くかかってしまう。

5年以内の短期譲渡の場合は39.63%(所得税:30.63%、住民税:9%)、5年以上保有すると長期譲渡となり20.315%(所得税:15.315%、住民税:5%)と税率が半分程度に下がるのでもう1年は我慢して持つことになる。アメリカは人口が増え続けているので物件選びを間違わなければ5年後に購入時と同レベルで売却することは充分に可能だ。

少し前からこの節税スキームについて課税を強化する法改正をすべきという声も上がっている。今後封じられてゆく可能性もある。しかしそういう議論が持ち上がること自体がこのスキームの有効性を如実に表しているのかもしれない。


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