ここ一、二年でよく耳にするようになった言葉だが、今週、それがいよいよ本物になるかもしれない。
15〜16日に米国のFOMC、17〜18日に日銀の金融政策決定会合。年に何度もあるイベントではあるのだが、今回ばかりは個人の家計にとって少し意味合いが違う気がしている。
30年ぶりの水準に戻った日本の金利
新発10年国債の利回りが、8月17日に2.93%まで上昇した。1996年10月以来、約30年ぶりの高水準で、3%突破が目前まで来ている。
これは市場関係者だけの話ではない。6月の日銀利上げを受けて、9月に入ってから三菱UFJ銀行と三井住友銀行が住宅ローンの変動金利をそれぞれ0.250%引き上げた。
いま変動金利は1.2%台、10年固定は3.8%台、フラット35は3.46%。変動と固定の差は年2.23%まで開き、これは集計が始まった2018年以降で最大だという。
借りている人にとっては確実な逆風だが、預ける人、債券を買う人にとっては30年ぶりに選択肢が戻ってきたということでもある。同じニュースが、立ち位置によって真逆の意味を持つ局面である。
米国は「利下げ」ではなく「利上げ」を織り込み始めた
おそらく多くの人が、まだ「FRBはこれから利下げしていく」と思っているのではないだろうか。ところが市場はいま、逆を見ている。
8月の米CPIは前年比3.4%と高止まりし、コアCPIは前月比0.3%と予想を上回った。ガソリン価格の高止まりも効いている。
7月のFOMCではすでに3人が据え置きに反対して利上げを支持しており、9月会合での利上げ織り込みは7割を超えてきた。
「金利はいずれ下がる」という前提で高PERの成長株や長期債を抱えている人は、銘柄の善し悪しより先に、その前提そのものを点検したほうがいい。前提が間違っていると、どんなに良いものを持っていても答えは合わない。
円安の潮目
そしてドル円である。9月に入って160円近辺から、一時154円30銭まで急落した。2月以来の円高水準だ。
為替介入ではない。日銀の利上げ観測と、FRB高官のインフレ改善発言によって、日米の金利差が縮んだことが主因である。
外貨建ての資産を持っている人にとって、ここ数年は為替が運用成績をかなり「かさ上げ」してくれていた。商品が良かったのか、円が安かっただけなのか、実のところ分けて見ていない人は多い。
その、かさ上げ分が剥がれる局面が来るかもしれないということだ。銀行勢の予想も150円〜164円と大きく割れていて、プロでも誰一人、自信を持って先を語れていない。
長期の積立で持っているなら、むしろ買い場が続くという見方もできるが、数年内に円で使う予定がある資金なら、出口の設計は今のうちに考えておきたい。10数年前に仕込んだ中国銀行の人民元定期預金などを回収するのには丁度良いタイミングかもしれない。
30年ぶりという言葉の重さ
それにしても、30年ぶりという言葉が重い。30年前といえば、前回書いた世代の区分けでいうところの団塊ジュニア世代が社会に出たあたりだ。つまりミレニアル世代から下は、「金利のある世界」を大人として経験したことが一度もない。
住宅ローンは変動が当たり前、預金は増えないもの、円は放っておけば安くなるもの。その三つの常識が、たまたま同じ一週間にまとめてひっくり返ろうとしている。
こういうときは、急いで動くことより先に、自分がどんな前提の上に立っているのかを一度数えてみることをおすすめしたい。動くのはそのあとでいい。


