人口ボーナスと人口オーナスを考える


「人口ボーナス(Demographic Bonus)」は国家の人口構成の中で生産年齢人口の割合が増えてゆくということである。人口統計は年齢層別に、

年少人口:0〜14歳の人口
生産年齢人口:15〜64歳の人口
老年人口:65歳以上の人口

に分かれている。

生産年齢人口がいわゆる現役世代と呼ばれ働いてお金を稼ぐ人たちなのに対し、年少人口と老年人口はまとめて従属人口とも呼ばれ生産年齢人口に経済的に依存する層であると言える。人口全体の中で生産年齢人口の割合が高ければお金を稼ぐ人の数が多いということであり、逆に従属人口にかかるコストである教育費や社会保障費の負担も比較的軽いということだ。

つまり収入が多くて支出の少ない状態。そうした状況下であれば経済成長が促進されやすい。

「人口オーナス(Demographic Onus)」は人口ボーナスの逆で人口全体に占める従属人口の割合が増えてゆく状態である。オーナス(Onus)というのは重荷とか負担を意味する言葉でボーナスが意味する特別手当とは対極にあることはイメージしやすい。通常人口オーナス期は人口ボーナス期を過ぎた後に発生する。経済成長が鈍化し所得が増えない一方で人口ボーナス期に充実してきた医療や年金などの社会保障負担が増え続けて可処分所得が減り停滞する。

人口ボーナスは以下のように定義される。

1.生産年齢人口が継続して増え、従属人口比率の低下が続く期間
2.従属人口比率が低下し、かつ生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間
3.生産年齢人口が従属人口の2倍以上いる期間

一般的には1から3へと順番に推移し、生産年齢人口が従属人口の倍を切った時点で最終的に人口ボーナス期は終わる。人口ボーナスが経済成長に与える影響がもっとも活発な時期は2の時期だと言われる。日本の場合は1960年代に始まった人口ボーナス期の2の段階は1992年に終了した。3の段階も2005年に終わって日本は現在人口オーナス期に入っている。中国の場合、2の段階は2010年に終了しており、3の段階は2034年に終わると予測されている。一番景気が良かったのが2の状態が完了するまでというのはおおかた符合しているように思える。

その観点で今後主要国のうちどの国が2の段階が長く続くのかということを調べてみた。データは2015年のものになるが人口ボーナスの完了時期に大差はないはずだ。

灰色でカバーした部分は2の段階を終えている国である。ざっくりと先進国やかつてNIESと呼ばれた新興工業国はすべて完了、BRICSではロシア、中国が、ASEANではタイ、ベトナムがすでに完了している。フィリピンはあと30年以上も生産年齢人口の比率が伸び続けることなる。上位10位でもあと10年以上2の状態が続く。比率ももちろんだが生産年齢人口の絶対数の大きさも重要な要素である。つまり2の段階を長く残しているうえに人口の多い国。一億人以上の人口を抱えるフィリピン、パキスタン、バングラデシュ、中でも10億以上の人口を誇るインドは出色だ。ただ人口ボーナスが到来するからと言って必ず経済成長が約束されるわけではないだろう。

人口ボーナス期の国は得てして国内の資本が脆弱なので成長のためには海外からの投資を呼び込まなければならない。つまり海外の投資家が安心して投資ができる環境を作らなければならないということである。内戦や政情不安は投資に対するリスクを増大させるし、金利を取ってはいけないという教義のあるイスラム圏などは投資に関して宗教との折り合いをどうつけるかという問題もある。また科学技術の発達による生産性の向上により人間の肉体的な労働を必要とする職種は今後減ってゆくので人口ボーナス国のアドバンテージはかつてほど高くはないという考え方もある。

だが15歳から64歳の生産年齢層はが厚いというのはやはり頼もしい。若い人間が次々に出てくるということは体力だけでなく知力も気力も旺盛な状態を保てるということであり、新技術の開発などクリエイティブな面でも大きなポテンシャルを秘めているのは間違いあるまい。


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