コルカタに入ったのは2018年7月10日。

一旦香港からバンコクへ、そこで今回の視察の案内をしてくれる投資会社ETAのR氏と合流し、インドの航空会社IndiGoの15:15出発便に搭乗しコルカタの「ネータージー・スバース・チャンドラ・ボース国際空港」着いたのは現地時間で16:55。両都市の時差が1時間30分なので2時間40分の飛行時間というところか。日本との時差は3時間30分である。

ちなみにインドに入国するためには日本人でもビザが必要だ。入国前に各国のインド大使館・領事館で申請・取得する方法、オンラインで申請する方法、到着後にイミグレで申請する方法の3通りがあるが今回は到着後の申請にした。イミグレの「VISA on arrival」と表示のあるカウンターへ行きその旨を告げると申請用紙を渡される。申請用紙には名前はパスポート番号、生年月日など普通の項目の他に「パキスタン人に親戚はいねえだろうな?」みたいな政治的な事情を反映する質問もある。

スムーズに入国できたものの手続きには40分程かかった。時間に余裕があれば良いが今回は先に入国したR氏を待たせてしまったので申し訳なかった。可能なら事前にビザを取得しておいた方が良いのは間違いない。宿泊したのは「Swissotel Kolkata」16Fにシンガポールのマリナベイサンズにあるような水際と風景がつながっているスイミングプールがあり、コルカタの市街地や空港を一望できる。伝統的な5つ星ホテルという佇まいでインド料理を中心にしたビュッフェの食事も非常に美味しかったが、部屋の位置が悪かったのかWifiの電波が届かないのには困った。メールのやり取りをするのに常に共有スペースのフロアへ行き、しかもそれでも何故かPCでメールの受信が叶わずようやくスマホだけが使える状態に直面し、多くの返信をスマホの小さなキーボードと音声入力を駆使してこなす。ブロードバンドケーブルのコネクタを持ってこなかったことを数年ぶりに後悔した。

翌日10:00AM、現地でプロジェクトの指揮をとるETAのD氏、そしてAditya GroupのA氏とともに車で今回の視察の目的地であるAdityaのメインキャンパスに向けてホテルを出発する。ホテル前の幹線道路は将来のコルカタ市内の市民の足となる鉄道網、メトロ(Metro)の建設が進んでいる。人の多さや経済成長による自動車の増加に交通インフラが追いつかず慢性的な渋滞が発生しているのは東南アジア諸国と同じだ。そこに新たな交通網の工事が重なり交通渋滞に拍車をかける。自分が過ごした1990年代の上海がちょうどそうだった。道路の拡張工事、その上を走る高架道路の建設、地下鉄や高架鉄道の工事が相次いで行われているときの交通渋滞はひどいものだった。しかしそれらが完成するとともに霧がはれるように一気に市内の移動は快適になったものだ。インフラ整備による交通渋滞は国や都市の発展と表裏一体であり、それは将来の可能性を充分に感じさせるものでもある。

Adityaのメインキャンパスは市内から30kmほど離れているに過ぎないが2時間近くをかけてようやく到着。そのまままっすぐ100km進めばバングラデシュに到達するとのことだが、この交通事情では気の遠くなる距離である。コルカタ郊外ということもあり今は路肩の崩れた片側一車線の道路の両脇に簡素な家や店が立ち並び、時々横切る河の水は真っ黒。だが人の多さはさずがだ、貧しいながらも子供もはじめとした若い年齢層が豊富で活気がある。目的地に到着し守衛のいる門をくぐると外の世界とは隔絶されたように整備されたキャンパスがあった。Aditya Groupのメインキャンパスには合計9,000人の生徒のうち2,000人が学んでいる。広大な敷地では生徒が学ぶ傍らで並行して様々なスポーツの競技場や設備の開発が行われている。Adityaはインドでもまだ数少ない体育やスポーツを教育に多く取り入れて心身ともに優れた将来のインドのリーダーを育成する学校を目指しているためだ。学校の入り口付近にある管理棟では富裕層らしき生徒の父兄がソファに座って学校関係者と懇談している。

ゴルフカートに乗って広い校内を回るとまず目に入ってくるのがかなりの数の観客席を備えたクリケット場。野球があるために日本ではマイナーなクリケットだがインドでは国民的スポーツである。かつて7つの海を支配した英国発祥であるクリケットの競技人口は野球の5倍の1億5,000万人を誇り、インドに存在するプロリーグ(IPL)の選手の平均年俸は日本のプロ野球のそれを上回る。西ベンガル州で唯一プロ規格に沿ったクリケット場を備えているAdityaはさしずめ大阪桐蔭のように国家最大のプロスポーツに多くの選手を送り込むことを構想しているのかもしれない。サッカー場やスイミングプール、バスケットボールコート、まだ未完成だがテニスコートの建設予定地を含む広大なスポーツ用の敷地が広がっている。

有名スポーツ選手を招聘して1日だけのコーチをしてもらうという活動にも力を入れており、これまでにも元プロのクリケット、サッカー、NBAのバスケットボールの選手などを招いているとのことだ。サッカーチームのロッカールームには昨年末にAdityaを訪れたマラドーナが着た背番号10番のユニフォームが飾ってあった。コの字型をした教室棟には通常授業を行うクラスルームの他に理科室やコンピュータを学ぶ特別教室が備わっており、校長の案内で校舎内を視察した午前中にはまだ生徒たちが真剣な表情で授業を受けていた。その他遠隔地から来ている寄宿の生徒が生活する宿舎と食堂、そして彼らを訪ねてきた親が宿泊する施設等々様々な建物がある。

衣食住が足りて物質的な欲を満たしたあとには自分の子供に対して選りすぐりの教育を与えるという消費の波がやってくる。レベルの向上とともに高騰した中国の教育費を親としての少しの痛みとともに思い起こしながら視察を終えた。

インド教育事業投資案件「Aditya Bond」

https://www.borderless-investment.com/adityabond/

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