2027年:人民解放軍創設100周年に合わせ、地域覇権を確実にする

2035年:軍の近代化を完了し、情報化戦争(AI・無人機など)に適応

2049年:アメリカに匹敵するか凌駕する「世界トップレベルの軍」を確立

2049年(建国100周年)までに中国が計画している国軍の強化計画である。

中国の軍事拡張

2017年の米中共同記者発表で習近平主席が「太平洋にはアメリカと中国を受け入れる充分な空間がある」と言った言葉からも読みとれるように中国は太平洋の西側を自国の勢力下に置くことを目標にしているのは確かだろう。実際、年間3,000億ドルを超えると試算される軍事費を注ぎ込み、すでに3隻の空母を保有、将来は6隻体制を目指している。原子力潜水艦も10隻以上保有、ステルス機能を持った第5世代の戦闘機、そしてそのステルス機を撃破するために開発されている第6世代戦闘機で中国はアメリカと開発競争を繰り広げている。

この他にも無人兵器やAI兵器の開発、サイバー戦、電磁波戦の専門部隊の配備など、アメリカ軍に対抗できる軍事力を着々と獲得中だ。アメリカの軍事費は年間約1兆ドルと中国の3倍以上ではあるが、これで全世界展開をしていることを考えると、中国が影響力拡大の目標を太平洋に集中して、その中でアメリカとの戦力均衡を目指すならこれは確かな脅威になるはずだ。ちなみに日本の防衛費は年間9兆円弱、2025年7月時点のレートでUSD600億程度である。

核保有国の強み

中国は核保有国である。そしてロシア、北朝鮮と日本は3つの核武装済みの隣国に囲まれている。さらにその内の一国はしばしば日本の近海に飛翔体を撃ってくる。もちろん日本は核兵器は保有していない。この事実に直面している日本人としては安全バイアスが働いて、ついつい過小評価しがちだが、客観的に見ればこれほど危険な場所は世界でも珍しい。

核保有国も実際にそれを使うというのは考にくい。現在、上記3国以外にもアメリカ、イギリス、フランス、インド、パキスタンが核保有を公表しているが、思想や政治体制が異なり、正直何かあれば敵味方に分かれて戦いそうな国々である。どこかで核兵器が使用されれば全面核戦争から人類全体の生存リスクにつながる可能性があるので、そこには大きなハードルがある。

核兵器の現実的な効用は自国の安全保障だ。最終的には核攻撃というオプションを持っている国は他国からの攻撃や侵略を受ける可能性を極めて小さくできるのは自明の理である。核保有国同士は牽制し合っており、保有国同士の戦争は起こりにくい。(2025年5月にインドとパキスタンの間で軍事行動が発生したが4日ほどで収束している)ましてや核の非保有国が保有国に対して戦いを挑むようなことはほぼあり得ないだろう。故に核保有国の安全は高いレベルで保障されるのである。

翻って核保有国が非保有国を攻撃する際のリスクは低く、武力を持って自らの意志を実現するオプションをより容易に使える。これは昨今の核保有国ロシアによるウクライナ侵攻を見れば明らかだ。それに対してウクライナを支える主に西側諸国陣営はロシアに対する経済制裁と武器の供与はおこなったものの自らの軍隊を投入して加勢することまではしていない。(一方でアメリカがイスラエルに加勢して各開発途中のイランを爆撃したことは記憶に新しい)ある意味、核保有国と対峙するうえでの限界はそこにあると言って良いだろう。

日米安保の実効性

日本が核保有国に囲まれているというのは高いレベルでそのリスクに直面しているということだ。もし他国の日本への侵攻があった場合には日米安全保障条約により、アメリカは軍事力をもって日本に協力する義務がある。そのために日本は自国内に米軍基地を提供し、反対勢力から憲法違反のそしりを受けながら米国の求める自衛隊による防衛力強化をおこない、在日米軍の駐留費の一部を「思いやり予算」として供出してきた。もし日本が他国に攻め込まれる事態が発生すれば、アメリカは憲法上の手続きとして議会の承認を得たうえで、同盟国日本側に立ち軍事行動をおこなうことになっている。

しかし敵国が核保有国だった場合に本当に自国へのリスクを顧みず、米国議会が承認して、参戦してくれるのかどうか?誰でも自分の安全が最優先だ。アメリカが約束通りに動いてこないという最悪の事態に備えて、対策を打てるのは今のうちなのである。

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