学校を出て就職あるいは起業しがむしゃらに働いて30代〜40代。ふと気づくとある程度まとまったお金が銀行の普通預金に貯まっている。”遊ばせておくのはもったいないな。。”と、ある日そのお金を何とか運用できないだろうかと考える。とても大事なことだが実はもっとも危険な時でもある。

投資初心者が肝に命じるべき資産運用の順序

”自分は投資の初心者だから。。”と本やウェブ上で情報を集めたり、投資関連のセミナーに申し込んだりする。もちろんそれ自体は悪いことではない。しかしそこでついついその時の自分に合っていない投資をしてしまったり、不良な案件や詐欺まがいの話に引っかかってせっかくのお金を失ったりすることがある。

はじめての投資で不動産に手を出しローンの返済を抱え本来自分に必要である基本的な資産運用ができなくなったり、高利回りを謳っていた牧場とか何かの養殖の事業投資が頓挫して出資金が戻ってこなかったり。そういう事態を避けるために投資の初心者が最初の1歩目と2歩目でやるべきこととは何か?

日本人の資産額の中央値は30代単身世帯で約500万円、ファミリー世帯で約400万円。40代では単身世帯でもファミリー世帯でも600万円前後だ。ちょうど自分の状況と同じだ、と思い当たる人は少なくないだろう。

そんな平均的な日本人がはじめて資産運用や投資に取り組むときどういう順番で進めれば良いか?

以下はファイナンシャルアドバイザーとしての僕の経験から編み出した回答である。

生命保険

まず第1歩目として考えるべきは、「生命保険」である。これはファミリーの大黒柱である場合は特に重要だ。自分にもしものことがあったときに500〜600万円で残された家族がどれだけ生活できるのか?奥さんがパート程度の収入を得ていて小学生の子供が2人という家庭であれば普通に暮らしていても3、4年で蓄えは底をついてしまうだろう。

そういう状態に陥らないためにもしものときに備えて子供が大学を出るまでの生活費をカバーできるぐらいの死亡保障を備えた生命保険に加入しておくことだ。死亡保障として必要な金額は家族構成や子供の年齢によっても違うが仮に上記のような家庭の場合2人の子供が大学を卒業するまでざっくり4,000〜5,000万円は準備しておきたいところだ。保険と貯蓄性を兼ね備えた終身保険に加入しておけば、もし無事に子供が成人するまで自分も健在であればそのときに生命保険を解約して解約返戻金が戻ってくるのでそれを夫婦の老後の生活資金の足しにすることも可能だ。

家庭を持っている普通の人がまず第一に考えるべき資産運用は生命保険。これは世界共通である。米国や英国、カナダなど海外の終身保険は利回りが比較的高く、加入してから15年程度保有して解約すれば払い込んだ保険料ぐらいの金額は返戻金で手元に戻ってくる。加入年数が伸びれば払い済保険料よりも多く戻ってくるので充分に資産運用効果も見込める。

日本の生命保険の予定利率は海外商品よりも低く、返戻金が払済保険料に追いつくことはなかなかないがそれでも家族の安心に備えておく効果は高い。生命保険の必要性は家庭環境によって変わる。自分が独身で両親もすでに亡くなっているようなケースでは生命保険の必要性はない。生命保険は保障が付いている分利殖効果はあまり高くないので必要のない人は直接次の段階の商品の検討に入って良い。

個人年金(長期積立)

次の段階、第2歩目の商品は、「個人年金」である。現役でバリバリ働けるうちは定期的に収入が入ってくるので良いが年齢を重ねればいずれ働けなくなるときが来る。サラリーマンや公務員であれば60歳とか65歳で定年退職したときが現役時代のゴールである。ある程度自分で引退時期を決めることができる個人事業主でも物理的に仕事ができなくなるときがくる。それ以降は自分が築いた蓄えで暮らして行かなければならない。近年医療技術の進歩で人間の寿命はどんどん延びている。日本では持ち家のある普通の夫婦が1ヶ月暮らしてゆくのに必要最低限の生活費は約22万円、ゆとりのある生活をすれば約36万円である(※)。(※)生命保険文化センター調べ

男性81歳、女性87歳平均寿命近辺まで生きるとしてざっくり20年、ゆとりある生活を目指せば8,640万円の資金が必要になる。日本には公的年金があり現時点での厚生年金の平均的な受給額は夫婦で約22万円、国民年金は夫婦で約13万円(6万5,000円/人)だ。単純計算で厚生年金需給家庭は3,500万円、国民年金需給家庭では5,500万円程度の不足が出ることになる。老後資金のこの不足分を埋めることが2番目(人によっては最初)にやるべきことである。

具体的には長期積立商品がこの個人年金には相応しい。毎月の収入から少しずつ貯金をするように投じてファンド(投資信託)を購入してゆく。購入するファンドの基準価格は上昇したり下落したりするが毎月少しずつ買うことにより高値のときも安値のときもまんべんなく買えることになる。

これはドルコスト平均法と言って収益を安定させる投資手法である。積立を始めるのはできるだけ早いほうが良い。そうして20年、25年という長期スパンで老後の不足資金を形成するのである。「自分はまだ何の運用もしていない、、どういう順番ではじめて良いかもわからない、、」という状態であれば、最初に手がけるべきなのは上記の2つである。

株式投資も不動産投資もFXも仮想通貨への投資もすべてそのあとで良い。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須