「逃亡犯条例改正案」に伴う大規模デモが最初に発生したのは2019年6月12日水曜日。

デモに参加したのは主催者側の発表で100万人、警察側の発表で24万人。4日後の6月16日(日)に起こったデモには主催者側の発表で200万人、警察発表で33万8,000人が参加したと言われた。両者の発表する数字がぜんぜん違うが、日本では一旦この両方の数字を言うもののその後は当たり前のように主催者側発表の大きな方の数字の基に報道しているようである。「人口800万人の香港で200万人となれれば実に香港に住む4人に一人が参加したことになる!」という論調だ。

デモと報道のおかげで逃亡犯条例改正案は棚上げされたが、、

だがこちらに住んでいる自分の肌感覚では違和感がある、正直言うと「それはあり得ないだろう、、」と。正確な参加者の数は数えようがないし、報道する側としても根拠ある限りなるべく大きな数字を言った方がインパクトがあり放送を見てもらえるし、記事も読んでもらえるのでそうするのはよく分かる。しかし実際は多く言いたがる主催者の発表数と少なく言いたがる警察のそれとの間に正確な数字があることは間違いあるまい。ちなみに正確でなくても最大で香港住民の20%以上が参加したとされたデモとその報道の影響で逃亡犯条例改正案の採決が見送られたのは個人的にはウェルカムである。

そもそも逃亡犯条例改正案とは何か?

改正案というくらいなのでもともとあった逃亡犯条例に修正を加えるものである。逃亡犯条例とは海外の国で犯罪を犯した人が香港に来た場合、その国と「犯罪人引渡し協定」を結んでいる場合は容疑者を拘束して引き渡しができる規定である。香港はイギリスやアメリカなど約20カ国とこの犯罪人引渡し協定を結んでいる。これは裏を返せば協定を結んでいない国には引き渡しをしないということである。

2018年2月、台湾で香港人の男性が一緒に旅行していた女性を殺害して自分は香港に戻ってしまった。この殺人事件はもちろん発生した台湾で法の裁きを受けるべきところであるが香港は台湾と引き渡しの協定を結んでいなかったため香港はその男性を台湾に送ることができなかった。その理不尽な状態を解決するために犯罪人引渡し協定の対象国をもっと広範囲に広げようというのが改正案である。その広げた対象国に中国本土が入っていたのが今回のデモの直接の原因だ。

なぜ香港市民は逃亡犯条例改正案に反対するのか?

1997年に英国から中国に返還されて、50年間は一国二制度のもと高度な自治と欧米諸国並みの自由を約束されている香港だが昨今中国が次第に影響力を増してきていることへの反発が大きい。そこへ来て、容疑者を中国へ送る制度化は多くの人にとって受け入れがたいことだったのだろう。中国に都合の悪い人間が何らかの罪をでっち上げられて、人権の尊重に不安のある本土に送られて理不尽な扱いを受けたりする可能性があるからだ。実際2016年頃中国政府が快く思わない書籍を扱う書店の関係者が相次いで失踪し、中国に連れ去られて厳しい環境下で尋問を受けていたという事件もあった。

犯罪人引渡し協定で他国に送られる可能性のある人は香港人のみならず、香港に住んでいる外国人も含まれる。上記に挙げたような罪のでっち上げや冤罪の可能性も考えると、自分自身にとっても逃亡犯条例改正案は成立しない方が良い。だからデモやその報道の結果、その採決が棚上げされたのは好ましい出来事だ。

続くデモと市民感情変化への懸念

7月9日には香港政府のトップである行政長官が「条例改
正案は死んだ」と述べたが、デモは7月末の現在まで毎週に起きている。条例改正案を完全撤回させるまで徹底的に運動を続けるという意思表示である。当初香港政府のある金鐘(Admiralty)から湾仔・銅鑼湾という辺りでデモをおこなっていたが、ここ2週間ほど自分の生活圏である香港島西部に活動場所を移動してきている。この地区には中国政府の出先機関がありデモ隊がそこをターゲットにし始めたからだ。7月28日夜は武装警察が放つ催涙弾の音とともにデモ隊が退却する様子が自宅の窓から窺えた。

ちなみにそれより少し早い時間に歩いてデモ隊と警察が対峙している辺りまで見に行った。そのときはお互いの距離を保って膠着状態だったが、デモ隊の一部が道路標識を引き倒しているところに出くわした。塀とか柵とかも壊れているものがあり、歩道にもところどころ穴が空いていた。すべてデモ隊のせいかどうかはわからないが”それを壊していったい何の意味があるのか?”と破壊行為に対しては疑問が残った。正直大義とは関係のない鬱憤晴らしや八つ当たりとか、後の時代から見ると伝説になるかもしれない活動の一部を自分が構成しているという興奮とかが作用した類の情動的な行動も多いのではないかと眼の前の破壊を見て感じた。。

そして今日7月30日はデモ隊が地下鉄の乗車を妨害するという事態が発生した。おかげで地下鉄の正常な運行に支障が出て本日組んでいた我々の仕事の段取りにも狂いが出た。活動家は政府に何らかのダメージを与えるためにやっているという建前かもしれないが、こんなことをしていてはその前に通勤、通学をする人、ひいてはその人たちを待っている会社や学校にも悪影響が出る。

最初は全面的に支持できていた香港の反政府デモだがここ数日は少し冷め気味だ。そう感じ始めている人は少なくないのではないかと思う。

PS:こうした一般市民からも反発を受けそうな行動は実は香港政府や中国政府が仕掛けているという都市伝説的な噂もある。万一そうであれば僕をはじめ冷ややかになっている人はまんまとその企てに乗っていることになるが、、真相を知るのは容易ではない


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