米大手デリバティブ取引所CMEで取引されているビットコイン先物が2020年2月6日に1万ドルを付けた。

ビットコインが2008年に発表されたサトシナカモトの論文を基に翌2019年に最初に発行されてから10年余りの時が過ぎたことになる。ビットコインで最初に買い物をした有名な話である「ピザ2枚をBTC10,000」、どのサイズのどんなピザを買ったのかわからないものの2枚でざっくりUSD50とするとそのときBTC1=USD0.005(0.5セント)だったことになる。

2009年〜2020年ビットコインの価格推移

マウントゴックス事件が起きた2013年頃はBTC1=USD100程度、その後じわじわと上昇してBTC1=USD1,000を超えたのは2017年初頭である。その年の年末にビットコインは過去最高値のUSD19,497.40(終値ベース)を付け、ちょうど一年後の2018年末にUSD3,236.76まで下落するという乱高下を演じた。仮想通貨バブルとその崩壊である。

2019年6月には一旦USD13,000台まで値を戻してから、2019年末に直近安値であるUSD6,640.52を付け、2020年からは大きく上昇して現在の水準にある。

ビットコイン取引で利益を狙う2つの方法

ビットコイン関連の投資で利益を狙うという点においては以下の2通りの方法がある。ひとつは市場に流通しているビットコインを売買してキャピタルゲインを狙うこと。ビットコインはすでにCME(シカゴ・マーカンタイル取引所)に上場されているほど世に認知されているので容易に取引ができる。

もうひとつはマイニングで新規発行のビットコインを入手するという方法だ。ビットコインはブロックチェーンという改ざんが不可能に近い分散型台帳による管理で信用が担保されているが、取引が記録される「ブロック」を新たに生成するためにコンピュータによる膨大な計算を要する「回答」を導き出さなければならない。この「回答」に成功し新しい「ブロック」の生成に成功した者にその作業の報酬として一定量のビットコインが新規発行のうえ、支払われるのである。

ビットコインの発行枚数の上限は2,100万枚(BTC2,100万)と最初に決められている。2,100万枚の中からブロック生成の報酬としてマイナー(マイニングを行う者)に少しずつ支払われて市場に出回ることになる。こうして市場に出たビットコインは2020年2月時点で約1,820万枚なのでまだ発行前のビットコインは280万枚ある。この280万枚を作業に対する対価として獲得するのがマイニングだ。

マイニングは日本語では「採掘」の意味だが実際は上記のようなコンピュータによる計算作業のことである。なぜマイニングというのかはわからないが作業によって未発行のビットコインという「価値あるもの」を獲得する行為が例えば金(ゴールド)という「価値あるもの」を掘り出して獲得する行為と似ているからではないだろうか。

なるほどどちらも全体量に限りがあり、その未発見のものを手に入れるという点では確かにイメージが合致する。流通済みのビットコインをマーケットで売買するのは金融商品への投資という性質を持つ一方、マイニングで新規発行のビットコインを得ることは事業投資的である。

マイニング機器という演算作業をする機械を買い(設備投資)、月々の経費(電気代、場所の賃料、メインテナンス費用)を支払い、ビットコインという報酬(売上)を得る。つまりできるだけ低いコストで運営し、売上を上げるかというのが勝負の分かれ目だ。

2020年2月ビットコインマイニングの現状

マイニング機器は現在ASICという専用機を使うのが一般的だ。自分のパソコンの演算能力を使ってマイニングすることも可能だが、この作業の専用機であるASICと比べると象とアリぐらいの差があるのでわざわざ投資してマイニングに乗り出そうという人にはASICの利用が必須である。

現在主流となっているASICにはBitmain社の「Antminer T17+(55TH)」という機器ががあるがこれがだいたいUSD1,200/台である。

例えばこの「Antminer T17+(55TH)」でマイニングを行なう場合2020年2月時点での採掘難易度で計算すると、1台あたり一日でBTC0.001の報酬が得られる。ビットコインは2月12日現在で約USD10,000なのでざっくりUSD10/日の収益が得られることになる。

一ヶ月(30日間)ではUSD300程度の収入ということだ。「Antminer T17+(55TH)」の消費電力は一時間あたり2,750W、24時間稼働で30日間使うと1,980KWHになる。

これを日本で行なうと、電気料金は25円/KWHぐらいなので電気代だけで5万円ぐらいかかってしまうことになる。USD300/月程度の収入では赤字である。。これは日本の電気代が世界でも比較的高い方であることが原因。

したがって現在マイニングは電気代の安い国でおこなわなければならなくなっているのが現状だ。またマイニング機器は稼働中にかなりの熱を発するので、健全な稼働を持続するためには自然に機械を冷やしながら作業ができる寒冷地での使用が得策とされている。

こうした原因で少し前は中国東北部などで盛んにマイニングがおこなわれていたが、電気代の安さと低温を追い求めて最近ではシベリアなどにマイニングの拠点が移っているようだ。我々の取引先にロシアのイルクーツク州でマイニング事業を行なっている会社があるが、電気代がUSD0.1/KWH程度だという。

そのくらいであれば一ヶ月の電気代はUSD198で済み、USD100/月程度の利益は確保できることになる。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須