2018年6月15日に施行された住宅宿泊事業法(民泊新法)により民泊は東京都大田区や大阪府など僅かな地域を除いては年間営業日数が180日以内(要届け出)に制限された。同時にかつては困難だった居住用マンションが旅館業の営業許可を取得することに関して規制緩和が進み、賃貸マンションの宿泊施設への用途変更やマンションとホテル両用の建築物の建設がしやすくなっている。

居住用マンションからホテルへの転用の障害

この環境下、いっそのこと旅館業許可をとって正々堂々と365日の営業をしようという機運が高まっている。かつて居住用のマンションを宿泊施設に転用するのに大きな障害となっていたものに「容積率の制限」と「玄関帳場(フロント)の設置」があった。

旅館業許可取得の規制緩和-容積率

容積率は敷地面積に対する建築物の延床面積(各階の床面積の合計)の割合のこと。100㎡の敷地に80㎡のフロアで5階建ての建物の場合、延床面積は400㎡となり容積率は400%となる。容積率は地方自治体によって商業地域や住宅地域等用途地域別に制限が設けられているが、この点での大きな障害はマンションとホテルで容積率の計算の仕方が違っていたということだった。

具体的にはマンションの場合、廊下・階段・エントランスホール、エレベーターホール、バルコニーなどいわゆる共有部分は延床面積から除外しても良いという特例があるのだ。一方、ホテルの場合は共用部分もすべて延床面積に含まれる。例えば指定容積率が400%で300㎡の敷地にマンションを建てると延床面積が1,200㎡の居住用マンションを建てることができる。仮に全フロアの面積が200㎡で各階50㎡が共用部分だった場合1,200㎡÷150㎡=8階建てのマンションが建てられることになる。

通常マンションを開発するデベロッパーはできるだけ効率的に収益をあげるために容積率ぎりぎりの物件を建設したくなるだろう。しかし同じ敷地に同じ間取りのホテルを建設する場合は各フロアの面積が共用部分込みの200㎡で計算されるために6階建てが上限となり、8階建てのマンションは容積率オーバーとなりホテルへの転用ができなかったのである。

ところが2016年6月に国土交通省から出された通知によって宿泊施設に関しては指定容積率の1.5倍以下または指定容積率に300%を加えた数値の小さい方を上限として容積率の緩和が可能になった。つまり上記の例でいうと指定容積率が400%なのでその1.5倍の600%、あるいは400%+300%=700%の小さい方の600%がホテルの容積率に適用される。

この緩和により共用部分を含んだ延床面積は最大1,600㎡までOKとなり、共用部分を含んだ200㎡X8階のマンション(延床面積1,600㎡)はホテルへの用途変更ができるのだ。国土交通省が通知した容積率の緩和を認めるかどうかは最終的には地方自治体の判断により決定される。

旅館業許可取得の規制緩和-玄関帳場

玄関帳場(フロント)は主に宿泊者名簿の管理、鍵の受け渡し、部外者侵入防止などセキュリティ上の用途で従来ホテルと旅館に設置が義務付けられていた。2018年6月15日以降、物理的な鍵の受け渡しが不要なシステムやビデオカメラ、顔認証など適切な設備、また緊急時にはすばやく駆けつけ管理ができる体制を揃えていれば必ずしもフロントを備えていなくても旅館業の許可が取得できるようになった。

居住用マンションには一般的にフロントに関わる設備がないのでこの部分も大きなハードルとなっていた。この玄関帳場の設置に関する許可も最終的な判断は自治体に委ねられているので地域ごとに確認は必要だが建築済みのマンションのホテルへの転用や両方の用途に利用可能な新築物件を建設することが画期的に容易になったと言えるだろう。

これら規制緩和の背後には昨今の観光客の増加などで宿泊施設が不足している一方で人口減少などの要因で賃貸物件の空室が増えているという環境が大きく作用しているように思える。国が規制を緩和することにより既存の空き物件が合法的に宿泊施設に転用できれば両方の問題を一気に解決できる緒となるかもしれない、と考えていても不思議はない。

すなわちそれほど宿泊施設の需要は逼迫しているということでありここには今はビジネスチャンスがある、ということを雄弁に物語っている。

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