居住用不動産を保有して収益を得るには賃貸アパート・マンション経営とホテル・宿泊施設経営がある。通常一年以上の長期に渡って滞在するテナントから家賃をもらって収益化するアパート・マンションは定住者、つまりある程度固定した人口をマーケットとするものであり、逆に短期の滞在に対応するホテル・宿泊施設経営は流動人口をマーケットとするものだと言って良い。

ホテル経営とアパート・マンション経営の違い

アパート・マンション経営は長期的に安定した収入が得られやすい反面がんばっても収益を伸ばせる余地は限られている。ホテル・宿泊施設は経営努力によって収益を大きくできる余地がある一方で運営にかかるコストは高い。アパートとホテルの収益構造の違いは物販の仕入れに置き換えるとわかりやすい。両者とも保有している部屋を1日あたりいくらで売るかというのが収益の基本だと考えるとアパートは少数のお客さんにたくさん販売する形になり、ホテルはたくさんのお客さんに少しずつ販売することになる。要するにアパートは問屋や大規模小売店による大口の仕入れと同じで薄利多売的になり、ホテルは多くの消費者に対してより利益の高い小売価格で売っているようなものだ。

昨今国内では従来のアパート・マンション経営者や別業界からのホテル事業参入が増えている。日本は2011年から出生数よりも死亡者数の多い人口減少社会に突入している。つまりアパート・マンションの需要となりうる固定人口は減っている。一方で海外からの観光客数は2012年頃まで年間800万人程度で推移していたのが2013年から急激に増加して2018年は3,000万人を上回った。訪日客の増加は政策としても重視されており、政府は2030年までに年間6,000万人を目標に掲げている。それに加えて、従来からの国内の出張や旅行の需要もある。ホテルの需要となる流動人口は増えているのだ。

ホテル経営の巧拙を見抜く指標

この辺りがホテルが増えている主な原因と捉えられるが、他にも旅館業法が緩和されて参入しやすくなったこともある。ロケーションによりほぼ家賃相場が決まっているアパート・マンション経営成功のためにはいかに空室をなくすかということが最大のポイントであるがホテルの場合はもう少し複雑な指標を見ながら経営戦略を練ってゆくことが必要だ。ホテルの業界用語で言えばOCC、ADR、RevPARといった数値である。

OCCとは?

OCC(Occupancy Ratio)というのは客室稼働率の意味。全客室のうち何%が販売できたかという割合である。(アパートの空室率と似たような概念である)

計算式:OCC=稼働客室数(販売した客室数)÷販売可能客室数

例えば販売可能客室数100室のホテルのうち80室に宿泊客が入れば(部屋の販売ができれば)OCCは80%。このホテルの1ヶ月(30日)の客室稼働率が80%であれば販売可能客室数が3,000室(100室X30日)のうち2,400室(80室X30日)が稼働客室数ということになる。

ADRとは?

ADR(Average Daily Rate)というのは平均客室単価で総売上金額を稼働客室数で割ったものである。

計算式:ADR=売上高÷稼働客室数

上記のホテルで売上が2,400万円だった場合、ADRは10,000円(2,400万円÷2,400室)だ。

RevPARとは?

これに対してRevPAR(Revenue Per Available Room)は売上を販売可能客室数で割ったものである。

計算式:RevPAR=売上高÷販売可能客室数

上記のホテルの売上が2,400万円だった場合、RevPARは8,000円(2,400万円÷3,000室)になる。

OCC、ADR、RevPARの活用例

なぜこの3つの指標をバランス良く見る必要があるのか一例を挙げて説明してみる。仮に100室のホテルのADRが20,000円でOCCが50%であれば1ヶ月30日間の売上は3,000万円となる。しかしRevPARは10,000円とADRの半分になってしまう。これは資産をあまり上手く活用できておらず、良い経営状態だとは言えない。

通常は宿泊費を下げればOCCは上がる。もし宿泊費を16,000円に下げたらADRは低くなるがそれでOCCが80%になるのであれば売上は3,840万円に増加する。そしてそのときのRevPARは12,800円となりこちらも改善される。値下げの戦略は成功と判断して良いだろう。こうした形で常に3つの指標を見ながらベストミックスを探ってゆくのがホテル経営の第一歩だと言える。


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