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「スタグフレーション」という言葉を最近よく耳にするようになった。

スタグフレーション(stagflation)は「停滞」を意味するスタグネーション(stagnation)と「物価上昇」を意味するインフレーション(inflation)を組み合わせた言葉。ざっくりと景気が停滞・後退して所得が増えないのに物価が上昇して家計を圧迫する極めて恐ろしい状態である。

インフレとデフレ

インフレーション(インフレ)はモノの価格(物価)が継続的に高くなってゆく経済の現象である。言い換えると通貨の価値がどんどん下がってゆく現象であるとも言える。例えば松屋の牛めし(並)が320円から380円になったがこれはお金の価値が下がったから60円余計に支払わなければならなくなったと考えられるからだ。一般に経済政策というのは通常このインフレに対して行うものである。インフレが進んで物価が高騰しているときは金利の引き上げで人為的に通貨価値を高めてそれを鎮め、物価が落ち着くと逆のことをして消費を喚起し景気の浮揚を図る。

インフレーションと逆の概念を持つ現象がデフレーション(デフレ)だ。デフレ状況下では物価が安くなり、現金価値が上昇してゆく。「モノの値段が安くなるなら良いではないか」という第一印象を持ちがちなデフレは実はかなり厄介だ。物価が下がるということは企業の売上が下がるということであり、そうなれば給料は上がらないからいずれ多くの人が貧しくなる。デフレは対策も打ちにくい。最初はインフレが落ち着いたときのように金利を下げてゆくことが対策になるが、それを続けるとやがて金利はゼロになる。金利を若干マイナスにすることもあったが「お金を預ければ金利が取られ、お金を借りれば逆に金利がもらえる」ようなおかしなことにはならず、自ずと限界に達するからだ。

良いインフレと悪いインフレ

インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があると言われる。

「良いインフレ」は経済が活発に動いていて需要に供給が追いつかず、物価が上昇してゆくケースで「デマンドプル型インフレ」と呼ばれるパターンだ。まさに需要(デマンド)が経済を牽引して好景気の中で発生するインフレで企業業績に良い影響があるために個人の所得の上昇にもつながる。日本の高度経済成長期には狂乱物価と呼ばれるような物価高が発生したがこれはデマンドプル型インフレの典型例だ。

「悪いインフレ」は人手不足からの人件費高騰や原材料価格の上昇など生産コストの上昇によって引き起こされる物価上昇で「コストプッシュ型のインフレ」と呼ばれる。特に需要が増えているわけでもないのに価格だけが上がる。消費が冷えてゆくのは目に見えている。行きつく先は不景気。すなわちスタグフレーションの発生ということになる。

スタグフレーションの判断

このパターンでのスタグフレーションの例は1974年のオイルショックとその後の不景気だろう。第四次中東戦争の勃発が発端となって原油価格が一気に70%上昇し、石油関連製品の価格が上昇する一方、材料高による生産縮小が起こりインフレが加速すると同時に失業者増の影響で多くの人が所得を大きく減らしたり失ったりした。

2021年現在、やはり原油価格の高騰や半導体不足による生産低迷によりアメリカの消費者物価指数(CPI)は5ヶ月連続で前年同月比5%増という高いインフレが発生している。

https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9052
引用:Yahoo!ファイナンス

景気の動向はGDP速報値や様々な景気動向指数で観察する。景気動向指数にはアメリカのフィラデルフィア連銀製造業景況指数、ニューヨーク連銀製造業景気指数やISM製造業・非製造業景気指数、日本では内閣府の景気動向指数や日銀短観などがある。それぞれの指数には「数値が50より上であれば景気は良い」とか「数値がプラスであれば景気が良く、マイナスであれば景気が悪い」などという独自の基準があるのでそれを踏まえて見ることになる。

例えばフィラデルフィア連銀製造業景況指数の場合は「数値がプラスであれば景気が良く、マイナスであれば景気が悪い」という形式だ。

https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9161
引用:Yahoo!ファイナンス

現時点では数ヶ月前より下落しているがまだプラス圏にあることがわかる。

ちなみに日本のインフレ率の推移は以下のとおり。

https://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html
引用:世界経済のネタ帳

スタグフレーションは発生するのか?

バブルが崩壊した1990年代前半以降高い方で1%台、多くはマイナス(デフレ)で、直近2年間もデフレ状態にある。つまり日本ではここ30年間インフレになることが稀で、政府・日銀の目標である「インフレ率2%」はもはや悲願に近いものになっている。コストプッシュであろうがなんだろうがとにかくもしインフレの軌道に戻れるならそれでも良いという考え方は無きにしもあらずかもしれない。

しかし過去スタグフレーションまでなった例はオイルショック以前は1960年末期の英国病の頃のイギリスとか1920年代昭和恐慌とか第一次大戦後のドイツなどが出てくる。正直かなりレアな大事件である。今回そうなるかどうかはやはり上記のような指標をチェックしながら慎重に観察する必要があるだろう。

スタグフレーション環境下での資産運用方法

もし本当にスタグフレーションになる場合、資産運用面ではどうすれば良いか?スタグフレーションもインフレの一種であるのでまず現金及びそれに近いもの、あるいはリターンの金額が決まっている以下のような資産は弱くなるので避けたほうが良い。

・現金
・定期預金
・債券
・通常の生命保険(死亡保障や解約返戻金の金額が固定されているもの)など

一方でこの時期に強くなる資産は以下の通り。

・不動産
・株式
・ファンド(リスク資産を基にした銘柄)
・商品
・ゴールドなど貴金属
・変額の生命保険など

いわば現金の対局にあるもの、リターンが金額で決まっておらずパーセンテージで変動するものになる。

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