Sorry, this entry is only available in 日本語. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

 

「失われた30年」という言い方をちらほらと聞くようになった。失われた○○年は1990年のバブル経済の終焉以降の日本経済の低迷を端的に表す言葉である。ざっくりと1990年代は失われた10年に当たり、2000年代までが失われた20年、状況は2020年の今日までさして変わらないのでいよいよ失われた時代は30年以上に突入という意味合いだろう。

何が失われたのか?独断で言わせてもらえば、日本人は世界でも経済的に豊かだとか、日本の技術力はナンバーワンだとか、今日より良い明日があるとかが感じられる状態だろうか。。

失われた30年

そもそも何かが失われたということを感じられるのは、その何かがあったことを認識している人のはずである。すなわちこの30年間に生まれた人は失われた○○年という言葉を聞いたことはあってもその意味を感じとることはできないはずだ。いや、それ以上の年齢であっても当時子供であれば雰囲気は憶えていても印象は薄いだろう。となると”失われた”感覚をはっきり持つことができるのはその時すでに働いて、消費して、という経済活動をはじめていた人たちということになる。少なくとも50代以上の人たちになるだろうか。

GDPと一人当たりのGDPに見る日本の現在地

2018年度の日本の名目GDP(米ドルベースのIMF推計)は約5兆ドルで世界第3位である。世界には190以上の国があるのでランキングの位置的にかなり良い感じはする。日本よりも上位には、1位のアメリカが約20兆ドル。2位の中国が約13兆ドル。アメリカは日本の4倍、中国は日本の3倍弱だ。4位のドイツのGDPは約4兆ドルで日本の8割。5位イギリス、6位フランス、7位インドが2.7〜2.8兆ドルでだんご状態、日本の5.5割程度である。

GDPを人口で割った1人あたりの名目GDPで日本は約3.9万ドルで世界26位。このランキングのトップにはルクセンブルグ(11.6万ドル)とかスイス(8.3万ドル)、マカオ(8.2万ドル)と言った人口が少ない割に金融や観光などどちらかというと偏った産業構造で大きな収益をあげている国・地域が名前を連ねるが、性質がかなり違うので比較対象としては適当ではない。

第一次産業から第三次産業まで揃っていて人口も数千万人単位以上の大国ではアメリカが6.3万ドルで9位である。

他のG7各国では、

18位:ドイツ(4.8万ドル)
20位:カナダ(4.6万ドル)
21位:フランス(4.3万ドル)
22位:イギリス(4.3万ドル)
27位:イタリア(3.4万ドル)

ちなみに世界トップクラスの人口を抱える中国は0.96万ドルで72位、インドは0.2万ドルで144位。しかし大多数の国民を差し置いて、一部の人に富が集中する過酷な格差社会であるこれらの国は逆の意味で比較対象になりにくい。これが日本の現在地である。

GDPで見る30年前の世界

時間を30年巻き戻してみる。1988年度の日本の名目GDP(IMF推計)は3兆ドルで世界第2位。1位のアメリカが5.2兆ドル、日本の約1.7倍だったのである。そして当時のアメリカのGDPは今の日本のGDPとほぼ同じぐらいの規模である。つまりアメリカのGDPはこの30年間に約4倍になったのに対し、日本は約1.6倍にしかなっていないという事実が浮かび上がってくる。

実は1995年にすでに日本のGDPは5.4兆ドルに達しており、そのときにアメリカは7.6兆ドルなので1.4倍ほどに肉薄したことがある。しかし日本の経済成長はこのあとピタッと止まってしまい、いまだにこの水準を行ったり来たりしている。一方でアメリカは経済成長を続け、日本との差を大きく広げた。GDPが大きくなったから相対的に成長率も低くならざるを得なかった、という言い訳が一瞬で吹き飛ぶ事実である。

同じく1988年の日本の1人あたりの名目GDPは2.5万ドルでスイスに次いで世界2位である。アメリカは2.1万ドルで世界9位、ランキングの位置は現在と変わらない。1988年の中国の名目GDPは0.4兆ドルで世界7位、インドの名目GDPは0.3兆ドルで世界12位。1人あたりの名目GDPは中国、インドとも約0.04万ドル(400ドル)で121位と122位だった。

2050年の各国の経済勢力図

こうなるとどうしても気になるのが将来はどうなるか、ということだろう。今後各国のGDP(経済力)がどのように変化するかという予測らしきものはGoogleやYoutubeなどを通じて「GDP ランキング 予測」などのワードで検索すればいくつか出てくる。いろいろな研究機関が推計していると考えられるが、その結果には結構ブレがある。それだけ将来を予測するのは困難なのだろう。

ただその中でも共通した傾向も見て取れる。それは今から30年後の2050年の予測を基にしたとき、

1.トップ3は中国、インド、アメリカが占めており、そのGDPの数値は4位以下とは大きな差があること
2.そのときの日本のGDPは6〜7兆ドル

というような部分である。

例えばあえてその一つとして以下の動画をピックアップしてみると2050年時点でのGDPランキングは、

1位:中国(50兆ドル)
2位:アメリカ(29兆ドル)
3位:インド(23兆ドル)
4位:日本(7兆ドル)

となっている。

未来の上位10カ国の予測国内総生産ランキング(2018年 – 2100年)
https://www.youtube.com/watch?v=5tWKkOHq3lc

繰り返すが、他にもいろいろな推計がありその結果は一様ではない。あるデータではインドの方がアメリカよりも上になっていたり、日本のランキングがトップ10の下位の方になっていたりするデータもある。しかし上の2つの傾向はどれも同じだ。そうなる可能性が高いと考えるのが妥当かもしれない。

2050年の世界は3つの超大国とそれ以外の国で構成されており、日本は今後30年の経済はこれまでの30年とたいして変わらないという姿である。。つまり日本ではこれまでと同じような年月がこれからもただ積み上がってゆき、やがて「失われた60年」となる。ただその頃には失われた〇〇年という言い方はなくなるだろう。

何が失われたのかが分かる人が非常に少なくなるからだ。革新的な出来事が起るなどして、そんな予測は外れることを願いたい。もちろん良い方に。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須