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相続税には3つの目的がある。

1つ目は不労所得に対する課税。

人間は社会的な生き物であり、労働などの社会貢献を通じて対価を得て生計を立ててゆくのが本来有るべき姿と考えられ、多くの人がそうしている。一方で相続により得た財産は不労所得であり、それは人間の持つ社会的価値観に合わない。財産を子供に渡したいと思うのは親心であり子供もそれを受け取るのは当然と考えるが、周囲の大多数はお金持ちの家に生まれただけで労せずそれを得るのはどうも腑に落ちない。その価値観是正のために相続資産から税金を徴収する。

相続税の役割

2つ目は所得税の補完機能。

所得税には非課税や軽減措置が設けられている、また資産が多ければ法人などを通じて所得額を圧縮できる機会も多い。そうしたことによって所得税が課税されず蓄積された財産を相続の時点で清算するという所得税の補完機能がある。

3つ目は所得の再分配。

もし相続税がなければお金持ちは代々お金持ちで有り続けることができ、さらに資産が資産を生む機会も多い。一方で貧しい人は継続して貧困にあえぐことなり、資産の不均衡が拡大して社会不安が生じる。こうしたことの行きつく先が革命など歴史上の混乱だった。相続税を徴収して社会に還元することによりそうしたことを予防しているといえる。

相続税納税の困難

しかし、相続税は今を生きる対象者にとって非常に頭の痛い問題でもある。相続税は現金で納めることになる(一部物納も可)がほとんどの場合相続税の対象となる富裕層はそのすべてを現金で保有しているわけではない。

例えば10億円の資産があったとして、1億円を現金、2億円を換金の比較的容易な金融資産、3億円を換金の難しい自社株、4億円を不動産、みたいな形で持っている。そこで当主が亡くなると5億円近い相続税を支払わなければならなくなる。

すぐに払えそうなのは3億円。あと2億円はおそらく不動産を処分して工面しなければならない。これが厄介で、売りやすい物件であればまだ良いが、大邸宅や地方のマンションだったりするとなかなかスムーズにはゆかない。納付期限に間に合わせるために大幅値下げして評価額以下で売却したりする必要も出てくるだろう。相続税支払いの影響で生活は一変、最悪住む家も失ってしまいかねない。

こうしたことは相続税のある世界各地で発生している。ただ、これは予見可能なリスクであり、事前の準備により回避する、あるいは大幅に軽減することも可能なものなのだ。海外においてその対策のひとつが「プレミアムファイナンス」という生命保険を使った仕組みなである。

プレミアムファイナンスを使った相続税対策

以下はそのプレミアムファイナンススキームの端的な一例である。

まず申請者がプライベートバンクに2億円を預金してそれを8%で運用してもらう。この運用による年間のリターンは1,800万円。一方プライベートバンクはその2億円の預金を担保にして、4億円を貸し付ける形で申請者を被保険者にした生命保険を購入する。例えば4億円の一時払いで10億円の死亡保障がある生命保険。その保険証券もプライベートバンクが担保として持つこととする。仮に4億円の借り入れ利息が4%なら年間の利息支払いは1,600万円となり、預金2億円の運用益で相殺できる。借り入れ利率がそれより高かったり、運用利回りが低かったりしてもそれなりの金額を圧縮することができる。

そのようにしておいてもし申請者が死亡した場合は保険会社から10億円の保険金が支払われる。10億円のうち4億円は借入金の返済に充てられ遺族は差し引き6億円を受け取る。その資金を相続税の支払いに充てるのである。これで相続人は被相続人生前の資産を減らすことなく以前と同じ暮らしができる。

プレミアムファイナンス利用の手引

北米と香港のいくつかの生命保険会社が日本人の契約を取り次ぎ始めたのは約30年前の1994年のことだ。当時ほとんどの日本人契約者はプライベートバンク経由での申し込みであり、平均の死亡保障額は5,000万米ドルにも上っていた。(為替レートが約USD1=JPY100だったので当時の価値で約50億円)相当な富裕層の利用だったと考えられる。

1994年から2015年の間にも多くの日本人が米国、香港、シンガポールなどに渡り死亡保障額1,000万米ドル以上の”ジャンボポリシー”を申し込んだが、そのうちの約半数がHSBC、シティバンク、JPモルガン、UBSなどの信用度の高いプライベートバンクによって提供されたプレミアムファイナンスを利用したと言う。

日本国内のプランより保険料が低いという意味において米国、香港、シンガポールの生命保険は現在においても有力な選択肢となっている。その場合まずは商品を取り次ぎ、管理をおこなうファイナンシャル・アドバイザーを選定する必要がある。ファイナンシャル・アドバイザーは依頼者の財務目標を達成するためのあらゆる知識を備えていることが大前提だが、その他に

A.語学に堪能
B.多岐にわたる商品内容を熟知
C.日本人にサービスを提供してきた実績と歴史
D.米国、香港、シンガポールでの金融ライセンスを保有

というところを判断基準とするのが良いだろう。

次回は人生の財務的ゴールを達成するためにどのように米国生命保険を選択するかについて触れてみたいと思う。
 

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