取引先から都内の新築一棟マンションの情報が来た。

9階建て16世帯、重量鉄骨造。

スペックは以下の通り。

・用途地域:商業地域・防火地域
・建ぺい率:100.00%>57.98%
・容積率:360.00%>358.95%
・敷地面積:150.11m2(45.49坪)
・建築面積:87.03m2(26.37坪)
・延床面積:659.54m2(199.86坪)
・施工床面積:849.86m2(257.53坪)
・容積算入面積:538.81m2(163.28坪)
・価格:457,600,000円(土地:220,000,000円、建物:237,600,000円)
・年間家賃収入:24,057,000円
・利回り:5.26%
・部屋あたり想定家賃:
1DK(約27.5m2)が約94,600円(+共益費:10,000円)
1LDK(約44m2)が約150,700円(+共益費:10,000円)

価格や収益の妥当性を検証してみる。

用途地域の検証

用途地域は都市計画法で定められた地域地区の分類だ。住居地域や商業地域、工業地域を大分類にして全部で13種類があり、細かい分類では準住居地域とか工業専用地域などがある。例えば工場を建てることのできる工業地域には準工業地域、工業地域、工業専用地域の3種類があり、準工業地域には住宅や危険性の少ない工場を建てることができる、工業地域では住宅も工場も建てられるが学校や病院はダメ、工業専用地域には住宅は建てられないなどの違いがある。

建ぺい率の検証

建ぺい率は敷地に対する建築面積の割合。建築面積とは屋根を除いて建物の上から見た面積(水平投影面積)平たく言えば空から見て建物が土地に被さっている面積と理解すれば良い。ちなみにこのマンションのある商業地域は住宅も商業施設も建設が可能、しかも建ぺい率が制限なし。つまり土地面積ギリギリまで建物を作ることができる。建築面積とは屋根を除いて建物の上から見た面積(水平投影面積)平たく言えば空から見て建物が土地に被さっている部分の面積と理解すれば良い。なので建ぺい率「100.00%>57.98%」の意味は100%までOKなのだがこのマンションは敷地の57.98%の面積に建物を造っているということになる。

容積率の検証

容積率は建物の大きさを制限する規制で「容積算入面積÷敷地面積」で表される。延床面積は建物の各階の面積の合計からポーチやバルコニー等を除いた面積である。施工床面積は延床面積で除外した部分も含んだ面積だ。容積算入面積は容積率の緩和措置により延床面積から本来は延床面積に含まれるが容積率の計算時には除外しても良いとされている共用廊下、エレベーターホール、車庫、自転車置場、ロフト、小屋裏収納、住宅地下室などの全部もしくは一部を除いた面積。誰でも小さな土地に高い建物(例えば香港にあるペンシルビルのような)を作って部屋数を増やせばもっと儲かる、、と思うが容積率の制限によってそうは問屋がおろさないのだ。「360.00%>358.95%」はほぼ容積率上限ギリギリの建物ということになる。

土地価格の検証

土地価格は売買の条件や需給の環境によって変わるので正確な金額がわかりにくい部分であるが近隣の土地の公示価格や固定資産税路線価などからだいたいの相場を把握することができる。公示価格や路線価は以下のようなサイトで住所を入力すれば調べることができる。

https://www.chikamap.jp/chikamap/Portal?mid=216

近隣の公示価格は586,000円/m3、固定資産路線価は380,000円/m3が調査結果だ。固定資産路線価は公示価格の70%程度の値なのでこの土地の適正価格は55〜60万円/m3というところだろうか。この物件の土地価格220,000,000円÷敷地面積150.11m2=1,465,592円/m2。公示価格と実勢価格(実際の取引価格)に開きがあるのは珍しくないが2倍以上はちょっと高すぎるか。。

建物価格の検証

建物価格(建設費)の相場も建物の建築プランや計算に含める設備の範囲などが業者ごとに違うのでわかりにくいところである。しかしこれもざっくりとした価格であれば把握は可能だ。建設費は坪単価と言って一坪あたりいくらで造ることができるのか、という形で示すのが日本での習慣になっている。坪単価X施工床面積が総工費(見積り)となる。

調べたところ、

木造の坪単価:400,000〜600,000円/坪
軽量鉄骨造の坪単価:500,000〜700,000円/坪
重量鉄骨造の坪単価:600,000〜800,000円/坪
鉄筋コンクリート(RC)造の坪単価:700,000〜1,000,000円/坪

という情報があったのでこれを参考にしてみる。

建物価格は237,600,000円。

だが実際これには外構工事費や地盤改良工事費、水道・ガスまわりの工事費や各種税金・手数料など建物自体の建設費に含まれていない費用が2〜3割入っているので25%を除外する。

237,600,000円X75%=178,200,000円が純粋に建物を造る費用と想定される。

建物価格:178,200,000円÷施工床面積:257.53坪=691,958円/坪

この建物は重量鉄骨造りなので妥当なところか。

想定家賃の検証

利回りが5.26%とされているこの物件の想定家賃はどうだろうか?

16部屋(1DKX10部屋、1LDKX6部屋)で年間家賃収入24,057,000円は月間家賃収入2,004,750円。

このマンションの部屋ごとの想定家賃は
1DK(約27.5m2)が約94,600円(+共益費:10,000円)で
1LDK(約44m2)が約150,700円(+共益費:10,000円)

この想定家賃が無理のないものかどうかも見る必要がある。家賃は以下のようなサイトで確認できる。

https://www.chintai.net

近隣の新築物件の家賃と照合したところだいたい相場通りであることがわかった。

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