「モノを売る商売(物販)」と言えばかつては多分に労働集約的なビジネスだった。市場調査に歩き回って商品を注文し、入荷したら検品をして店に輸送し陳列、販売してようやく利益を手にできる。同じお金を稼ぐ行為でも投資はそれほどの労力を必要としない。

Eコマースの成長

株式投資なら証券会社に口座を開設して、売買の指示を出すだけで利益(損失)が確定する。不動産投資は物件を購入する段階あるいは賃貸管理などで株の取引よりもう少し面倒だが回り始めたら物販よりも少ない手数で毎月の利益を手にできる。

約20年前にインターネットが爆発的に普及してから物販ビジネスにも大きな変化が起きた。Eコマース(EC)化の流れである。インターネット上での通信販売が従来型の小売店での販売やメールオーダー通販のシェアを奪う形でどんどん成長しているのだ。

アマゾン(Amazon)やヤフオク、楽天などでモノを買ったことがない、という人を探す方が難しい。そのぐらいECは我々の日常生活に浸透してきている。今やたいていのモノはネットで検索してショップや出品者を探し、クレジットカードで決済すれば数日で手元に送られてくる。ピンポイントで欲しい品物を探して店を歩き回る必要もなく、同じ商品でもより安く買える場所を探したり、また中古でもかまわないという需要にもECはとても便利だ。

2017年のBtoCのECを通じた売上規模は日本全体で約8兆円、全小売に対するEC経由の売上の割合であるEC化率は5.4%。まだ95%の買い物は小売店を通じて行われている状態だがEC経由の売上の昨年の伸び率は10.6%であり、2020年にはECの売上は20兆円規模になると見込まれている。つまり今急激にネット通販市場は成長しているのである。買い物をする側だけでなく売る側にとっても利便性は急速に高まっている。

オンライン販売の変化

ひと昔前はYahoo!オークション(現ヤフオク)で商品をひとつずつ出品して落札されたらそれを梱包し、郵便局や宅急便で送る、あるいは楽天で結構な費用と手間をかけて出店する、というような方法しかなかった。実店舗を出すほど大変でもなかったがまだまだ多くの人には敷居が低くはなかった。ところが最近では簡単に安い手数料で新品中古を問わず出品のできるAmazonマーケットプレイスや、スマホで商品の写真を撮ってそのまますぐに販売できるメルカリの出現もあり今や誰もが簡単に販売者になって利益を上げることができるようになった。

特にAmazonでは「FBA(フルフィルメントバイアマゾン)」という出品者の在庫をAmazonの倉庫で預かり、商品が売れたらその梱包や発送まで代行してくれるシステムもある。出品者は商品を注文してFBAに送り、ウェブ上で簡単な出品作業をするだけで販売ができるようになっている。しかも納品する商品はたった1個でもかまわない。

一方で仕入れもウェブ上で完結することが容易になってきている。eBayや中国のタオバオと言った海外のECプラットフォームでも様々な商品が売られていてクリックひとつで購入して送ってもらうことができる。そしてよく調べてみると同じ商品でも海外と日本では結構価格が違うものもある。中には日本では10万円で売っている商品がアメリカのeBayで8万円ぐらいで買えたりするケースもある。どちらもクリックひとつで注文できてクレジットカードやPaypalで決済すれば家まで届けてくれるのは同じ。国際送料が数千円かかったとしてもアメリカから買った方が1万円以上も得である。

オンラインの転売が現物投資と見なされる理由

商品によってこうして日本の方が高かったりする一方であるいは逆に日本の方が海外より安く売られ1ているものもある。その場合は日本で買ってアメリカのeBayやAmazonなどで売ることだってできる。例えば海外のECサイトで国際間の郵送費や売買に伴う手数料を引いてもまだ余るぐらいの価格差のあるものを見つける。そういう商品を購入して日本のAmazonのFBAに送って出品・販売すれば利益が取れる。

いわゆる転売であるがこうした商売もほとんど自分が動き回ることなくパソコンを通じてネット上の操作だけで完結することが可能になってきている。中国のアリババなど多少数量をまとめれば中国製の安価な商品をさらに安く仕入れることができるサイトもある。数万円の資金でも仕入れが可能だ。

中国には国内での商品の受取や検品、転送をそれほど高くない費用でやってくれる転送業者もある。そうした外注に依頼してFBAまで商品を送ってもらえば自分はパソコンを操作するだけでそこそこ大きな利益を狙うこともできる。もはやインターネット物販は多くの自己労働を必要としなくなったという意味でビジネスというよりも投資に近くなった。商品を見極め資金を投じ、時期が来たら利益を回収する。いわば、「現物投資」という投資の一種であると感じるのである。

商品の入荷、梱包、出荷という物流の部分を外注してしまえば自分はネット上で「買い」と「売り」の操作をするだけ。まだ証券会社を通じて株式やファンドの売買をするほどシンプルではないが不動産投資よりはずっと少ない労力でお金を稼ぐことができる。また先に商品を出品しておいて売れたらそれを素早く仕入れて購入者に送ることも可能である。

無在庫販売と呼ばれる手法であるが文字通り在庫のリスクを抱えることなく、先に売上を回収してから商品を仕入れる。これはもう株式でいうところの「空売り」以外の何者でもない。まさに現物投資と言っても過言ではない

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