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2021年3月18、19日に米アラスカ州のアンカレッジで米中外交トップによる会談が開かれた。

冒頭でアメリカ・バイデン政権のブリンケン国務長官が新疆ウイグル自治区、香港での人権問題、台湾併合、米国へのサイバー攻撃の懸念、米国の同盟国やパートナーに対する経済的な威圧など昨今の中国の行動に対する非難を浴びせると、中国の外交責任者である楊潔篪国務委員がそれを内政干渉と反論したうえでアメリカ国内にも有色人種に対する歴史的な人権問題があると応酬した。

米中外交トップ会談

「いつまでも上からものを言ってんじゃねえよ!」

「散々人権侵害してきたあんたらに言われたくねえな!」

「俺らと話したいならそれなりの態度で来いや!」

発言者の本音を直訳するとこんな感じだろうか。

一見、巷の喧嘩のような舌戦が世界一、二の大国の正式な会談で繰り広げられたことになる。国内向けのパフォーマンス的要素も大きいのだろうが、なかなかインパクトのある出来事で世界最大の戦力を持ち、実践経験豊富で、やりたければ無理矢理にでもこじつけて攻撃してくるアメリカに対してよく言ったなあと関心するのと同時にもし日本だったら同じことが言えるだろうか、、という正直少し寂しい気持ちにもなった。

会談後の趨勢

もちろん実際はそんな舌戦がメインなはずはなく当然一般大衆の見えないところでの真面目な話があるのだが。ただあの言葉の応酬にはある意味で両国の関係が新しいフェーズに入ったことが表れているような気もしてならない。会談のあと欧米は人権問題に対して中国の個人と団体に対して制裁を課し、すぐさま中国も同様の報復制裁をおこなった。これまでは経済活動を通じて中国と密接な関係にあった欧州諸国が反旗を翻すような行動に出た。EUが中国に制裁を課すのは1989年の天安門事件以来のことだ。

これに対し同じくEUに制裁されているロシアが中国と共同声明を出してこの欧米の制裁措置を非難している。今年は中国共産党結成100周年、義和団の乱の戦後処理である北京議定書の締結から120周年にあたる。北京議定書では当時の清王朝政府の国家予算の4倍以上にも上る巨額の賠償金が日・英・独・米・仏・伊・露・オーストリア・ハンガリー帝国の列強から請求されることになり、それがその後100年近くに渡る中国の窮乏の大きな原因となった。屈辱の時間であったに違いない。

一方でその間、特に1979年の改革開放以降先進諸国の協力と投資を呼び込みながら経済発展と軍備拡大による国力の増強を進めてきた。アメリカは他の国が世界の覇権を脅かすことを許さない歴史がある。冷戦時代のソ連との争い然り、その後に経済的に肉薄したことのある日本も貿易摩擦に関連した様々な圧力で力を失った。そんな前例を充分に学習していると思われる中国はあまりアメリカを刺激しないように、それどころか逆に上手に協力を引き出しながらアメリカに肩を並べる超大国になる計画を着々と進めてきたと言って良いかもしれない。

新たな局面

しかしいずれは限界がくる。目的を達成するためには南シナ海や東シナ海や台湾などで具体的に行動をしなければならず、それはもうコソコソやれる規模ではないからだ。トランプ大統領時代の貿易戦争や中国産業の締め出し等の行動からアメリカはすでに中国を自分の覇権に挑戦してくる脅威として認めた感がある。

もう以前のように中国の勢力拡大につながるような不用意な協力はしてこないだろう。それならばもう会談での相手のきつい言葉を穏便に流すような配慮は必要ない。逆に啖呵を切った方が国威発揚の役に立つのならそうしよう、ということにもなるだろう。

新しいフェーズ。少子高齢化により成長が鈍化するまでのタイムリミットもある。会談から一週間。NYダウは1%下がり、上海総合は9%下落した。

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