Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.


 
そこで暮らし始めたのは27年前の1995年。蘭州ラーメン1杯が3元(当時のレートで約45円)、青島ビール大瓶が4元(同約60円)100円ちょっとでそこそこ腹を満たして、ほろ酔い気分になることができた。

よれよれの人民服を来た年配の男性が闊歩し、朝夕の通勤時には自転車の大群、粗末な街灯がぽつりぽつりと並ぶだけの通りは夜になるとほぼ真っ暗、当時最新のマンションでも水回りは悪くシャワーの途中で温水が出なくなることなど日常茶飯事。当時の最先端の都市の一つであった東京から来た身にとっては発展途上国の大都市というが印象が強かった。

世界有数の変貌を遂げた都市

だがちょうどその頃を境に見たこともない壮大な規模、そして目まぐるしい速度で変化が訪れた。その後10数年間は建設現場から出る粉塵がすべてを覆った。ひしめいていた粗末な低層住宅は次々に取り壊され、更地になった土地から雨後の筍のように高層ビルやマンションが建てられていった。高速道路が張り巡らされ、前年は車で5時間かけてたどり着いた場所に翌年は2時間足らずで行けるようになる。地下鉄は毎年のように路線が増え、2000年まで1号線しかなかった地下鉄は現在18号線まで開通している。この間にGDPの規模を20倍に伸ばしてきた国の経済を牽引してきた都市。

上海ロックダウンの混乱

上海とそこに住む人にとっては改革開放、いや文化大革命以降はじめての挫折かもしれない。新型コロナの蔓延を防ぐためのロックダウン開始から1ヶ月が経過しようとしている。上海市街を流れる黄浦江の東側の浦東地区で3月28日〜4月1日、西側の浦西地区で4月1日〜5日という予定で始まったにも関わらず今だに解除されていないのだ。中国の都市は通常マンションや住宅の開発地区ごとに「小区」と呼ばれる地域で分けられており、それぞれに居民委員会が設置されている。

小区で1人でも感染者が出れば住民全員が14日間の外出禁止となる、別の日に新たな感染者が出るとそこから起算してまた14日間延長されることになっている。基本的に外出が許されず頻繁に行われているPCR検査や物資の受け取りでわずかに外の空気に触れることができる状態。感染した人が比較的遠隔地に作られた「方舱医院」という野戦病院風の場所に移送されて療養する姿もニュースなどでよく目にする。

総人口で東京の2倍を数える都市の突然の封鎖は当然多くの混乱を生じさせた。まずは自宅に隔離された状態になっている一般市民の食料の供給。外出できずスーパーも開いていない状態なので市民への食料補給のシステムが必要だが、当初は政府側も市民側も4日間の封鎖を前提に動いていたので対応が遅れた。後に全国から輸送された食料を居民委員会ごとに割り振って各家庭に届ける段取りが徐々にできていったがそれまでに飢える人はかなりの数に上り、それまで割と従順とされていた上海の人々が禁を破って外出し抗議や衝突などが発生した。

個人的に妻が上海の出身なので現地にいる義理の両親や親戚から伝わった情報では封鎖後1週間ほどではじめても物資が届き、その後は週2回程度配給があるとのことだ。しかし各世帯に均等に配布されるため、1人暮らしも5人家族も同じ量しか届かないなど、まだ解決しなければならない問題は山積している。

住民による自助努力「団購」

一方でただ配給を待つだけではなく、住民は中国独特の「団購」という集団仕入れの仕組みを使って物資を購入するということもおこなっている。「団購」はWeChatなどのSNS上で同じ「小区」に住む住民でグループを作り、仕入先を知っている人が仕入れられる商品の情報をアップして「この商品が欲しい人は連絡ください」という感じで注文を募り、まとめてその小区まで業者に持ってきてもらうのだ。ITに慣れていない高齢者や近所付き合いの苦手な人や外国人など「団購」に参入障壁のある人もいたりするが食料や生活必需品の不足も解消の方向には向かっているようだ。ちなみに妻は香港から両親の住む小区のグループに入り、「団購」で彼らの食料を調達するのが朝の日課になっている。

ロックダウンの行方

日本や香港でも一時期そうだったがコロナ以外の病気を病院で診てもらえずにたらい回しにされた挙げ句、症状が悪化したり、亡くなってしまうということも多発している。経営者などは開業できないまま
家賃や従業員の給料などのコストがかかるが政府がそこを補償するようなことも今だなされていいない。異常な状況の中で精神的に参ってしまう人も出て、自殺者も激増しているようだ。当局発表ではコロナによる死者は一日に数十人。(この数字も正確かどうか疑問だが、、)一方でそれ以外のロックダウン関連死の人数は将来もまず出てこないだろうがおそらくはるかに多いはずだ。

貿易の重要拠点である上海の物流や港湾が止まっているという影響が世界の産業にも及び始めている。自分が住んでいるコミュニティに1人でも感染者がいればその他数千人の活動が止められる。そんな理不尽で非効率な措置の終わりは現時点では全く見えないと言って良い。

ここ2、3日で北京でも感染者が増え始めているという。2年前に中国にとって目の上のタンコブだったトランプ大統領が政権を追われたのはおそらく大統領選の年に発生した新型コロナ対応の原因が大きいだろう。秋の共産党大会で前例を覆す3期目の政権を目指す習国家主席にとってもやはりコロナ対応が重要課題になるかもしれない。

0
2011年の発行開始以来毎週配信されているBorderless Group代表玉利将彦のメールマガジン

メール講座【国境なき投資戦略】

* 入力必須